内容 |
奈良の世界遺産・元興寺周辺に、「ならまち」と呼ばれる地域がある。江戸時代以降の歴史的な町家が立ち並び、昔ながらのどこか懐かしい空気を醸し出している。しかし近年、それらの町家が空き家として放置されたり、取り壊されてハイツや駐車場などの、町並みにそぐわない景観が生み出されるといった例が後を絶たない。
本論文は、町家の再生利用に焦点を当てながら、ならまちが現在に至るまでにどのような変遷を辿って町に賑わいをもたらしてきたのかを知り、ならまちの真の魅力を探ることを目的としている。
その町活性化の背景には、ならまちの象徴ともいえる美しい町並みの保存・活用を推進する、官と民の継続的な協同的取組みがあった。家賃や改修費用の問題など、町家保全への課題はまだまだ山積みであることが分かった一方、ならまちの景観を守りつつ、町家の素晴らしさを最大限に活用している例も多く存在することが分かった。また、ならまちは、観光地といえども住居の地としても機能しており、商売をする人と住む人がお互い共存し合っている。歴史を感じさせる古い町並みはもちろん、住んでいる人々の昔ながらの生活風習やなりわいも垣間見れ、それらの自然な営みが、ならまちの魅力といえる。 |