内容 |
近年の電子書籍ブームはすさまじい。2010年には「電子書籍元年」という言葉が生まれたように、日本における電子書籍への取り組みはますます活性化している。特に個人制作によるコンテンツという立場において電子書籍は魅力的なメディアで、小説や漫画作品を制作・配布することがこれまで以上に簡単なものになると予想されている。また「Appstore」や「Kindle Store」などの電子書籍販売サービスを利用することで、趣味としての個人制作の枠を越えて、いとも簡単に著作を電子出版することができるようになった。しかし、利点ばかりではなく、大きな問題点も存在する。他のコンテンツやメディアでは既に兆候が見られているが、個人制作が活性化することでプロ、アマやジャンル、作品の良し悪し含めたあらゆる作品が入り乱れるコンテンツの氾濫現象につながる恐れがあるといえる。コンテンツ産業について語る上で、個人制作の活性化はコンテンツ産業それ自体もより発展させるという意見が多くあるが、この現象はそれとは全く逆、個人制作によってコンテンツ産業が衰退する事例となりうる。そこで本論文では電子書籍における個人制作を題材に、この現象に迫りたい。 |