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近年、性別役割分業によるジェンダー問題が活発に議論されている(菊池 2011;保坂2005)。女性は、重い家庭責任を担わされ、多くが生きる手段である仕事を辞めていく。また、男性と肩を並べて仕事をしていても、男性に扶養される存在として、不当なほど低い賃金しか支払われない場合がある。他方男性は、家族を養う責任者として1日中仕事に縛られ、家庭生活から阻害されている。仕事を失った男性は、扶養責任の重圧から精神を病み自死へ向かうことや、仕事から逃れられずに過労死へ向かうことが女性と比べて圧倒的な比率である(過労死弁護団全国連絡会議 1989)。また、1999年の男女共同参画社会基本法の制定と、その後の同法改正により、職場における男性優位の差別的処遇に対する規制は厳しくなってきた。こうして、男性の仕事中心の生き方や女性に対する支配的な振る舞いは、その正当性を失い始めた。女性の人権ばかりが問題視される陰で、性別役割分業の規範は、男性にとっても抑圧的なものとして経験されるようになってきた。ジェンダー問題といえば女性に関するものが大多数を占め、検討されている(脇坂・冨田 2001 昭和女子大学女性文化研究所 2010; 福岡女性学研究会 2011)。本稿では、先行研究の少ない男性側の意見について検討し、性別による、性別のために起こりうる不自由さについて男性・女性の目から中立的に明らかにすることを目的としている。
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