卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名FABIO RAPHAEL GYGI 年度2012年度
タイトル痴呆へのまなざし
内容 痴呆は理性をうしなった人間の失墜した姿と捉えられていた。祖霊信仰や忠孝道徳という素地がある中、自然の生理プロセスとして排除されるものでなく、共生し付き合っていく時代があったのも事実である。しかし明治時代に入ると、西洋医術を採用した経緯から痴呆が医療の管理下に入っていくことになる。そして街を自由に徘徊することができなくなり、癲狂院へと導かれるようになる。そして現代において痴呆が認知症に替わる経緯を見ると、単なる差別へ配慮以外にも、早期診断・早期発見という理由も存在していた。また生物学的遺伝学的基礎づけや、高齢化社会の到来、老人介護の制度が複雑に絡み合い、医療化を一層推し進めていることがわかった。現代の精神疾患の診断基準であるDSM内の痴呆も古代の痴呆分類も社会的に構築されたものであり、それは相対的なものに過ぎないのである。
講評 今年は初めてファビオゼミから卒業者13名が出る。卒業論文のテーマは世論調査の政治的な効果から臓器移植に関する比較研究まで幅広い分野に渡る。方法
論も、エスノメソドロジーからインタビュー調査とアンケート調査を含む質的研究法が多かったが、計量的なものもあった。しかし全体的に言えるのは、議論が不十分である。優秀な出来映えの二人を除けば、全員の議論にかなり無理がある。
問題意識がはっきりしていなかったり、ただ幾つかの事例を羅列して述べているだけのものや、学術論文と言えないエッセイ的になったもの、設問と結論が微妙に一致していないもの、質的研究法で得られたデータをムリヤリに仮説検証型に押し付けるなどの失敗がよく見られた。自分で得られたデータからどんな結論を導き出せるのかという点でもかなり論理上の無理が多 かった。ギリギリ最後までに卒論を後回しにした人は、調査の醍醐味を感じたのか「もっと早くやれば良かった」と言っていた。取りかかりが遅かった点に関しては、指導教官として厳しさに欠ける面があったと反省している。
キーワード1 痴呆
キーワード2 社会構築
キーワード3 医療化
キーワード4
キーワード5