学科 | 教育文化学科 | ゼミ教員名 | 吉田 亮 | 年度 | 2014年度 |
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タイトル | 1970年代アメリカでのメキシカンによる社会向上運動 ―メキシカンカトリック団体を事例に― |
内容 | 本稿は、1970年代におけるメキシカンの社会向上運動をテーマとしている。先行研究では、二つの理解が見られる。ひとつは、社会的地位のあるメキシカンアメリカ人は、主流社会に同化していったということである。他方は、社会階層の低い一般大衆のメキシカンによる抑圧への抵抗運動として、独自文化を尊重するチカーノ運動が発生したというものである。しかし本稿では、このような同化という単純な捉え方と、アングロ社会とメキシカンの対立関係は一面的であまりにも単純化しすぎていると考える。同化や隔離のみでは説明できないメキシカンの多様性を明らかにするため、他者との関係性に注目した。史料として、メキシカンカトリック団体(PADRES)の機関誌を用い、メキシカンカトリック団体の労働運動、教会の聖職をめぐる戦略などを詳細に分析した。その結果、メキシカンの社会向上運動はバイカルチャーを意識し、主流社会との共存関係の中で行われていたことを明らかにした。 |
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講評 | 「1970年代アメリカでのメキシカンによる社会向上運動―メキシカンカトリック団体を事例に―」は、カトリック系メキシカンの社会向上運動団体を事例としてとりあげ、従来の社会向上運動に関する二項対立的解釈(アメリカ化v.チカーノ化)に対し、新たな解釈を提示している。事例である、メキシカンカトリック団体(PADRES)による社会向上運動の研究によって、アメリカ社会との関係性維持を意識しながら、メキシカンの社会的地位向上を目指すという特徴をもっていたこと。また、同団体は、ホスト社会によるメキシカン集団の認知を高める文化活動を展開していたことを、明らかにした。つまり、従来の解釈とは違い、同化、隔離、抵抗といういずれかのキーワードを用いてメキシカンの社会向上運動を解釈するのではなく、アメリカ社会によるメキシカンの権利承認と両者の相互変容を目指すという解釈を提示したことになる。近年、チカーノ運動の研究が進み、多くの研究成果が発表されるようになってきているが、大半の研究は、二項対立的解釈から抜けられていない。そのような研究状況にあって、メキシカンの中でも、カトリック集団を取り上げ、従来とは異なる、団体活動の多面性に注目した点は、大いに評価されるべきである。 |
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キーワード1 | アメリカ |
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キーワード2 | メキシカン |
キーワード3 | チカーノ運動 |
キーワード4 | カトリック |
キーワード5 | PADRES |