卒業論文詳細

学科教育文化学科 ゼミ教員名吉田 亮 年度2014年度
タイトル1945年から1948年におけるハワイ日系社会の文化構築
内容 本稿は、太平洋戦争終結直後のハワイにおける、日系社会の文化形成に焦点を当てる。太平洋戦争を経て、もともとエスニック文化に寛容であったハワイ社会は、戦前とは異なる戦後の新しい社会のあり方へと移行していた。その時期の日系社会はどのような動きを展開したのかについて考察した。終戦からの数年間、日系社会では日本的な要素を含む文化活動が大変な盛り上がりを見せた。しかし、先行研究ではこのテーマについてほとんど研究されていない。本稿では、この現象こそが移民初期から現在に至るまでのハワイ日系人史を語る上で大きな意味を持つと考え、日本語新聞『布哇報知』を使用して詳細に分析した。囲碁、相撲、柔道、盆踊り、楽団、映画、演芸などについて具体的事例を調査し、1945-48年に構築された日系文化の特質を明らかにした。
講評 「1945年から1948年におけるハワイ日系社会の文化構築」は、第二次大戦後に、ハワイの日系人が開始したいわゆる日系文化構築活動をとりあげ、戦後において戦前期の日本文化が復活(リバイバル)したとする従来の解釈に対し、新たな解釈を提示している。事例研究によって明らかになったことは、戦後の日系文化構築における特徴として、3種類の文化活動によって構成され、ごく少数の例外を除いて戦前の日本文化がそのままの形で復活したケースはなく、多文化社会ハワイ社会において生き残るための変容が起こっていること、さらにはハワイ社会への積極的な文化貢献をすべくローカル化するものが二世による活動に見られたことである。つまり、従来の解釈とは異なり、戦後日系文化の構築を反同化、日本回帰、抵抗運動ではなく、多様性とローカル化という新しい解釈で説明したことになる。近年、ハワイの日系文化に関し、音楽、宗教、日本語、文学等の研究が進みつつあるが、戦後の日系文化に関する研究にまで手が届いていない。こうした研究状況にあって、戦後の日系文化構築活動をとりあげ、戦前との比較に基づき、新たな解釈を提示した点で、本研究はハワイ日系人史研究に貢献するものがある。
キーワード1 ハワイ
キーワード2 日系社会
キーワード3 日系文化
キーワード4 戦後
キーワード5 二世