学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 藤本 昌代 | 年度 | 2021年度 |
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タイトル | 子ども食堂を取り巻く組織の機能と課題 |
内容 | 現在日本では子どもの7人に1人が貧困状態に陥っており、子どもの貧困は貧困に由来する不利や困難を引き受け、次の世代まで継承される可能性が高いことから一般的な貧困以上に深刻な問題だとされている。2012年から始まった民間の活動である子ども食堂は子どもの貧困や孤食対策、地域の居場所づくりなど多種多様な役割を担っている。本稿では子ども食堂を取り巻く行政、社会福祉協議会、子ども食堂の支援活動と果たす役割を明らかにすること、社会福祉協議会と子ども食堂に立ちはだかる障壁を明らかにすることを目的とし、4者にインタビュー調査を行った。その結果、子ども食堂は運営者、ボランティア、利用者のすべての人にとっての居場所であり、子ども食堂での活動は成長の機会となっていた。さらに、子ども食堂は子どもの課題にとらわれない多様な支援活動を行っていることから現代日本においてSDGsの推進を牽引する存在となっていた。そして、日本社会に好影響を与える子ども食堂において運営資金、人材、場所といった資本の欠如と「子ども食堂=貧困」のレッテルは活動の阻害要因となっていることが明らかになった。 |
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講評 | 本稿はコロナ禍の中、「子ども食堂」を運営する3か所のボランティア団体への聞き取り調査を行い、子供たちが置かれた社会的状況や子供たちに提供される「場」のもつ社会的意義を明らかにしている。本調査では貧困層の子どもの救済だけと捉えられがちである「子ども食堂」が、そのイメージによって対象となる子どもが利用しにくい要因としてマスメディアによる偏った報道があることを指摘している。本稿では「子ども食堂」は、親からネグレクトを受けている子どもだけでなく、高齢者や地域の交流の場として機能すること、それによって子どもたちが多様な人々と接触することができ、社会性が育まれること、そして、関わる大人にとっても社会的成長が促される重要な「場」であることが明らかにされている。また、この「場」は、社会関係資本構築に寄与しており、外国人労働者の差別の解消、子どもの貧困の救済、社会的孤立など、SDGsのいくつもの要素を体現した場であることも発見されている。本研究はあまり知られていない組織の実情を知るための貴重な調査記録でもある。 |
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キーワード1 | 子どもの貧困 |
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キーワード2 | 居場所 |
キーワード3 | 子ども食堂 |
キーワード4 | |
キーワード5 |