卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名JENNIFER MARY MCGUIRE 年度2021年度
タイトルSNSの特性がナショナルアイデンティティの揺らぎに与える影響
内容 グローバル化によりボーダーレスな社会となった現代において、国民国家の枠組みは解体されつつありトランスナショナルな文脈に生きる者のナショナルアイデンティティは揺らいでいる。さらに本稿では近年普及が進むSNSの影響があれば、単一のバックグラウンドしか持たない者でもナショナルアイデンティティが揺らぎうるのか考察した。トランスナショナルな問題を扱う上で重要視されるのは居場所という概念である。居場所はありのままの自分が否定されない場所を指し、当人の自尊感情を高めてくれる。自尊感情の高い人は自らのネーションに対するナショナリズムが高まるとされており、居場所の存在はナショナルアイデンティティと大きく関連している。またSNSは空間の制限を超えたコミュニティ形成を促し、よりスムーズな他文化コミュニティへの参入可能にする。そのようなSNSが生み出すボーダーレスな環境が居場所だと感じる時ネーションへの帰属感やナショナルアイデンティティは揺らぎうることが考えられる。
講評 本年度は11本(英語5本、日本語6本)の卒論が執筆された。しっかりした内容で書かれたものと未熟なものの差が目立った。差が生じた原因として考えられるのは、3回生のとき作成した企画書を研究スケジュール通りに順調に進めた学生と先延ばしにされてしまって、なかなか上手に進められなかった学生の違いである。

卒論の質の差があるにかかわらず、どの論文も人類学的なまたは社会学的なアプローチと理論の理解については、ある程度のレベルが見えた。今年度の研究テーマは①Japan’s recurrent education (日本におけるリカレント教育) ②「早生まれ」と性格形成 ③ SNSとナショナルアイデンティティの揺らぎ ④ ライフステージと趣味への影響 ⑤ Single parent homes and juvenile delinquency (ひとり親家族と少年非行) ⑥ Homelessness in Japan (日本におけるホームレス問題の現状) ⑦ 在日中国人学生の自国友人関係 ⑧ Impressions of Japan by returnees (帰国子女による日本への印象) ⑨ Japanese subculture experiences among Chinese exchange students (中国人留学生における日本のサブカルチャー経験) ⑩ 「日本人」の捉え方 ⑪ 女子大学生のライフコース及びキャリアプランと就職活動である。

調査方法に関しては、ほとんどのゼミ生が半構造化インタビューを行い、中には資料分析及びアンケート調査を行った学生もいる。インタビュー調査を中心として行った学生は、効果的なインタビューガイドを作成し、対象者と良いラポール形成ができたと思われる。その一方で、理論的な分析、概念的な枠組みに関しては不十分のものもあった。

コロナによって、2年間、教育及び調査への悪影響があったにも関わらず、全員が卒業論文を完成させることができたので、誇りを思ってほしいと思う。卒業後も、このような大変な経験を生かして、どんな困難な状況でも諦めず、成果が出るまでやり遂げてほしいと思う。
キーワード1 ナショナルアイデンティティ
キーワード2 SNS
キーワード3 居場所
キーワード4
キーワード5