内容 |
本研究は,依存症問題をもつ家庭で育った子どもが,どのような過程を経て依存症問題から克服するのか明らかにするためのものである.先行研究には,ミードの社会的自我論,浅野の自己物語論,ジンメルの社会分化論,ボーエンの家族システム論を用いた.データとしては,ギャンブル依存症の父を持つ大学生 A の小学生時代から現在に至るまでのエピソードをエクセルに記録した.さらに,そのデータを用いてコレスポンデンス分析を行った.その結果,克服の第三のフェーズへ到達するまでに,「me」が中心となっている第一のフェーズ,そして「I」が中心となっている第二のフェーズを辿っていることが分かった.克服へとむかうために重要となる第二のフェーズでは,以下のことが起こっていた.田舎から都市へ移住したことにより,大学生 A の文化圏が拡大した.それにより A は家庭からの自立を達成し,家庭の態度を取り入れた「me」に囚われない,より自由な「I」としての反作用を獲得した.さらにその「I」の反作用によって依存症問題による症状を抱えた家族システムは変化し,結果として「me」の再構築が起こり,A は依存症問題を克服したことが明らかとなった. |