卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名立木 茂雄 年度2021年度
タイトル「生きる力」とエージェンシー
内容 現代の日本の学校では政府が公布する学習指導要領に沿って指導が行われている。この学習指導要領は最近では平成29年から30年に改訂がなされた。そこで大きく注目されているキーワードは、「生きる力」である。また、現在世界的に注目されているキーワードはエージェンシーである。どちらも主体性に関する言葉であり、その歴史は長い。そこで、先行研究を参考に①「生きる力」が提唱された社会的背景,②「生きる力」とエージェンシー概念の結節点を調査した。①については3点考察した。55年体制の崩壊による日教組の路線変更,阪神淡路大震災の発生後、防災教育の意識の高まり,いじめや不登校など教育問題が身近なものになったことが挙げられる。②に関しては3名の研究者を参考にした。心理学と教育研究に精通していた梶田叡一,1996年中央教育審議会第2小委員会の専門委員で文化人類学者の青木保,1990年代後半にはエージェンシーの概念になじみがあったと思われる人類学者の足立明。彼らを媒介して「生きる力」とエージェンシーの理論が混合したかについては、可能性を示唆するにとどまったが、同時代性が確認できた。
講評 1996年の中央教育審議会以来の流行り言葉となった「生きる力」の成立過程を、同時代の社会的背景(55年体制の崩壊や阪神・淡路大震災など)や学術的背景(エージェンシー概念)との連関をたよりに探索しています。綿密なライブラリーリサーチを実施し、数多くの文献資料を渉猟しました。同じ「生きる力」あるいは「エージェンシー」という概念であっても、その内包・外延は多様であるだけに、ズバリ的を射る手がかりがなかなか見つからず途中かなり歯がゆい思いをしたかもしれません。しかし、突拍子もなく「生きる力」なる概念が出現したわけではなく、流行するに足る条件は整っていたということは、嶋田さんの粘り強い研究姿勢によって示せたのではないかと思います。
キーワード1 「生きる力」
キーワード2 エージェンシー
キーワード3 学習指導要領
キーワード4
キーワード5