学科 | 教育文化学科 | ゼミ教員名 | 吉田 亮 | 年度 | 2015年度 |
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タイトル | 「1880年代から1920年代アメリカ社会におけるユダヤ系集団間関 係と社会上昇-西欧系、東欧系が挑んだ文化的連帯を事例に-」 |
内容 | 本稿では、1880年代から1920年代アメリカ社会において、ユダヤ系移民がどのように社会上昇を実現しようとしていったかを、西欧系ユダヤ移民と東欧系ユダヤ移民の集団間関係に着眼し、論じた。これまで、西欧系と東欧系の関係性は劣悪なものとされていた。その為、アメリカ社会に適応していくことを目的とする、主体性を有していない集団と捉えられてきた。また、ユダヤ系移民の社会上昇を、集団間関係の視点では語られてこなかった。そこで、西欧系と東欧系の集団間関係を明らかにし、先行研究では言及されていなかったユダヤ系移民としての、アメリカ社会における社会上昇を実現しようとしていた姿を新たに考察した。第1章では、アメリカにおけるユダヤ系の通史について説明し、第2章、第3章ではユダヤ系の文化的事象を事例に、彼らの集団間関係と社会上昇について分析を行っている。 |
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講評 | 「1880年代から1920年代アメリカ社会におけるユダヤ系集団間関 係と社会上昇-西欧系、東欧系が挑んだ文化的連帯を事例に-」は、世紀転換期 から20年代期の西欧系と東欧系ユダヤ人による社会的上昇のための諸活動を取り 上げ、先行研究では指摘されてこなかった新たな要因を提示している。同時期の ユダヤ系史では、改革派の特徴の強い西欧系によるアメリカ社会への急速な適応 が進む途上に、自集団の独自性維持を掲げる正統派が圧倒的多数を占める東欧系 が大量に参入し、その結果として反ユダヤ主義が高まり、西欧系をもその犠牲と なるという描かれ方がなされてきた。本研究によると、西欧系・東欧系はそれぞ れ集団の特徴、ヨーロッパの出自とアメリカへの参入時期において顕著な違いを 有していたにもかかわらず、東欧系が参入を開始する19世紀末期において両集団 の協調に向けた接近が始まっており、20世紀初頭にはその協調は実態となってい たのである。従来の研究では、大量の東欧系を抱えてしまったアメリカのユダヤ 人がどのように社会上昇を達成し得たのかについては、アイリッシュ同様に東欧 系による労働運動への関与が大きな要因として指摘されている。しかし、激しい 反ユダヤ主義に対抗してユダヤ系全体が社会上昇を達成するためには、西欧系と 東欧系がそれぞれの違いを超えて連携する必要であったはずである。その点にお いて、西欧系と東欧系が連携を開始し、展開する時期を特定し、さらに連携の中 身についても考察している本研究は、大いに評価できる。 |
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キーワード1 | ユダヤ系 |
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キーワード2 | 集団間関係 |
キーワード3 | 社会上昇 |
キーワード4 | ザ・ジューイッシュメッセンジャー |
キーワード5 | 文化的連帯 |