卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2023年度
タイトル新しい自営とその暮らし―京都で小商いに挑む若者を事例にして―
内容  現代の若者は安定志向であると言われる。学生は学業に充てる時間を返上してまで就職活動に取り組み、正社員を目指す。しかし正社員になっても、昇給は見込めず、低賃金で長時間就労を強いられるとった状況も多く、近年では企業勤めをしていれば安心といった価値観は消え去りつつある。そこで筆者は「新しい自営」が若者の職業選択肢の一つとなり得ないかと考えた。今回は新しい自営の中でも小商いに注目をし、京都で小商いを行う方々へのインタビューを通して、小商いの始め方や地域とのつながり、ライフスタイルについて調査した。
 結果、調査対象者の多くは生活と仕事が融合しており、職住近接の現象が見られた。ただ、就労時間は長くとも、自らの目標やアイデアを持つ余裕を保持しながら働くことができれば、彼らの仕事・生活に対する評価は高くなることがわかった。また小商いのコミュニティの所在に関しては業種によって異なりが見られた。飲食店や日用品店以外の常連客が付きにくい業種ではインターネットを使用した地域外のつながりを重視しており、地域内にとどまらない働き方をしていた。
講評  この論文は、日本型企業社会への参入に疑問を持ち、京都で小商いを挑んでいる若者の働き方や生き方を考察している。何より、飲食業、宿泊業、花屋、雑貨屋、学習塾と多岐にわたる調査対象者と関係を築いた取材力を評価したい。対象者の7名は、いずれも親の自営業や老舗の継業者等ではなく、小商いの世界への新規参入者であり、「新しい自営」に挑む若者である。また、調査対象者はいずれも被雇用者であった過去を持ち、セカンドキャリアとして新しい働き方を求めているという共通点がある。筆者は、こうした「新しい自営層」の生活評価の高さに着目し、それとの関連性の観点から働き方や暮らし方に関する諸論点について、丁寧な半構造化インタビューから明らかにしている。完全な独立自営業ではなく、企業に属したり、兼業したりしながら小商いに挑んでいる事例もあり、メンバーシップ型でもジョブ型でもない、広がりつつある自営型の働き方の実例として考察を深めたい。
キーワード1 新しい自営
キーワード2 小商い
キーワード3 若者
キーワード4
キーワード5