卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2023年度
タイトル子育てにおける地域「共助」の意義と課題―多様な人々が交わる「ごちゃまぜ」コミュニティの事例をもとに
内容  安心して子どもを産み育てることが困難になっている昨今、公助と自助の限界が叫ばれ、共助によって子育てを支えようとする試みが各地で展開されている。母親を中心とした子育てサークル活動をはじめ、育児コミュニティを活性化させようとする活動が様々な方法で模索される中、本稿では「多世代交流」や「ごちゃまぜ福祉」をキーワードに地域の多様な主体が関わり子育てを支える活動に注目する。具体的には、「アグリステーション丹波ささやま」「団欒長屋」「はうす結」の代表者へのインタビュー調査と参与観察を行い、各団体がどのような経緯で生まれ、地域のコミュニティとしてどのように機能しているのかを考察した。その結果、多様な主体が関わる共助が、子どもの育ちや自分らしい母親アイデンティティの形成を支え、地域住民の問題意識の向上につながることが発見された。また、コロナ禍には学校や保育所が臨時休校・休園となり、行き場を失った親子が多くいた中で、親子の居場所として共助のコミュニティが機能していたことも確認されたが、多様な人が交わることで生じる人々の対立や、無償ボランティアに頼りがちな共助を労働の視点から考えることは今後の課題である。
講評  本論文は、子育てについて、地域の多様な主体が「ごちゃまぜ」に関わるタイプの共助の活動について、参与観察とインタビューを踏まえて考察したものである。3つの調査対象は、それぞれ田舎暮らしの多子世帯、シングルマザー、障害を抱えた子どもの母親の当事者がコロナ禍後に立ち上げた新しい活動で、自らが行政サービスや市場化されたサービスでは対応できない困難を抱えた「制度の狭間」の存在であることが出発点だという共通性がある。筆者は取材を通して、このような「共助」の活動について、「子ども」「親」「地域社会」のそれぞれの文脈における意義について明らかにし、属人的な熱量とマンパワーに頼っているがゆえの課題を考察している。論理構成が優れ、記述も明快で、とても説得力のある論文である。こうした活動が広がった全国的文脈、先駆的な事例も含めて考察を深めたい。
キーワード1 子育て
キーワード2 地域共助
キーワード3 多世代交流
キーワード4 ごちゃまぜ福祉
キーワード5