卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2023年度
タイトル私的空間をひらくマルシェの価値と可能性
内容  昨今よく耳にするマルシェはあらゆる規模や目的で開催されており、飽和状態である。本研究では中でも特徴的な、個人が主体となり私的空間をひらくマルシェに注目し、公共空間の現状も踏まえて一個人が作る公共空間としてのマルシェの意義を捉えるため調査を行った。このようなマルシェがどんな価値や特徴を持ち、関わる人や社会にどのような影響を与えるかを問いに3事例のフィールドワークと主催者をはじめとした関係者5名にインタビューを行った。調査より私的空間をひらくマルシェは主催者の好きなことや考えをそのまま表現できることが強みで、個人主体ならではのフットワークの軽さとコツコツ長期的に継続し地域に根を張る地道さの両方を兼ね備えていた。また自分の目の行き届く範囲でマイペースに取り組めることから、マルシェにおいて重要な軸や統一感を守りやすく、継続にも寄与していた。そして主催者が大変さを超えた楽しさを感じている事がマルシェの魅力を作り出す。変化の激しい今全員を包括する1つの公共空間ではなく独自の色を持ったマルシェなど、個人が作る小さな公共空間が増えることで1人1人が心から魅力を感じる居場所と出会えるのではないか。

講評  7万字近くの力作である。10数か所のマルシェに足を運び、それぞれについてリッチな説明と考察がなされている。筆者は、マルシェによって出現する公共性のあり方に注目し、自らの観察した事例について、ボトムアップの手法で類型化を試み、そのなかでもとくに、個人が主催し、行政や大資本に頼らず、店舗の敷地の一部などを利用し、規模拡大を目指さないながらも回数を重ねている独創的なマルシェの事例に注目し、深堀りしている。筆者はそのささやかな実践の背後に、田中元子が提唱した「マイパブリック」の考え方、あるいは近年の新しいまちづくりのなかで注目されている「タクティカルアーバニズム」「共創」といった新しい公共性の創造に通底する考え方を読み解いている。この研究は、こうした実践が求められる地域・社会経済の文脈に関する考察に開かれており、発展性の高いものである。
キーワード1 マルシェ
キーワード2 私的空間
キーワード3 公共空間
キーワード4 マイパブリック
キーワード5