卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名藤本 昌代 年度2023年度
タイトル社会格差が健康に与える影響とギャップから、日本の運動不足を解消して健康な人を増やすための指針 ?都道府県別スポーツ施設に着目して?
内容  本論文では、さまざまな社会格差と健康の2つに焦点を当て、官庁データの2次分析を行なった。 また、スポーツ施設の有無にも着目することで、スポーツ施設が社会にどのような影響を与えているのかについての分析も行なった。これらの分析から3つのことが明らかになった。1つ目は、東北地域の平均寿命が低いことやBMIが高い都道府県は平均寿命が低いことから、地域差と寿命の関連性が明らかになった。2つ目は、男女の所得格差と運動習慣の傾向が明らかになった。その傾向は、男性は中間所得者層の人が最も運動習慣があり、女性は低所得者層の人が最も運動習慣があった。このことから、女性で低所得者というと社会的には弱者と捉えられてしまうことが多いが、運動習慣は男性よりも高く平均寿命も高いことから、健康の面では弱者とは言えない。3つ目は、都市部スポーツ施設総数が多いので、施設を利用して運動をしていると考えられる。一方で、スポーツ施設や人も少ない郡部は、家の周りで運動を行うことで、健康を促進し、時には同じように運動している近隣住民と会話を交わすなどコミュニティの場という意味合いも含んだ運動をしているのではないか。このことから、都市部と郡部ではスポーツ施設の環境や運動の意味合いも異なることが明らかになった。
講評 本稿は、日本における健康ブームが盛んな中、国民の健康とスポーツ器具の設置の関係に注目した論文である。研究手法は官庁統計データとして、スポーツ施設の設置と人口密度、都道府県別寿命、スポーツを楽しむ習慣等々の調査データをダウンロードして、分析している。分析の結果、学歴や所得と寿命の関係など、先行研究通りの健康と階層の問題、東北地方の低寿命地域とスポーツ習慣の関係などが析出された。本研究で注目すべき発見として、スポーツ習慣は、高所得者、低所得者に少なく、男性では中所得者、女性では、おそらく主たる家計維持者ではない低所得者に多いことがある。つまり、本稿はビジネスで忙殺される男性より、パートタイマ―などで時間を調整できる女性たちやエリート層ではないかもしれないが、生活に困窮しない中程度の所得を得て、時間的に余裕のある男性の方が健康的な生活をしている可能性が高いという興味深い結果を明らかにした論文と言えよう。
キーワード1 社会格差
キーワード2 健康
キーワード3 スポーツ施設
キーワード4
キーワード5