学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 藤本 昌代 | 年度 | 2023年度 |
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タイトル | 多様化する高齢者の生き方への生涯現役志向という社会的圧力 ー高齢者の語られ方に着目してー |
内容 | 現在、家族構成の変化によって高齢者の生き方にも変化が生じている。1つ目に高齢者の生き方が多様化、2つ目に高齢者の介護機能が社会にも移ったことである。この変化により生き方のモデルが喪失したが、老後にポジティブ・ネガティブな視点が生じる。社会的には「いきいき」とした老後が求められる一方で、すべての高齢者が同じ生活を送ることは出来ない。では、実際の高齢者の生活は新聞記事でどのように語られているのだろうか。 そこで、朝日新聞と日経新聞の1998年、2008年、2018年の年間の記事分析を行った。その中で注目した点が、2018年の傾向として見られた「生涯現役」志向である。生きがいを持ちいつまでも働き続ける社会を目指す中で、一方で、「迷惑をかけない生活を送ろう」といった考えを持つ人々の姿も見ることができた。以上の記事から、「生涯現役」志向は高齢者に自立し続けなければならないといった規範を作る圧力になっていると結論付けた。 |
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講評 | 本稿は高齢者の生き方について、社会が老後をどのように生きるべきかという強い規範を与えているということを実証した研究である。研究手法は新聞記事のテキスト分析であり、朝日新聞と日経新聞の2紙に書かれた高齢者に関するネガティブな言説(老人介護で苦しむ家族像など)とポジティブな言説(充実した老後生活、生涯現役などの元気な高齢者像など)を1990年代末から10年毎に調べている。その結果、ネガティブな記事もポジティブな記事も、高齢者は「元気であらねばならない」という明示的、暗示的な圧力が高齢者にかかっていることが明らかにされた。本稿は社会や家族に「迷惑をかけない存在」であることが望ましいという規範の強さに高齢者の生きづらさが示された秀作であるといえよう。 |
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キーワード1 | 高齢者 |
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キーワード2 | 生涯現役 |
キーワード3 | 生き方 |
キーワード4 | 多様化 |
キーワード5 | 介護 |