内容 |
本論文では、日本国内の患者と医師の倫理観の変化から生まれた、人が「人としてよき死」を迎える「尊厳死」という考えがどれほど浸透し、患者や家族、また医師に影響を与えているのか、また表面的な意味ではない「真の尊厳死」を迎えるために患者自身はどのように生き、周りはどのような意識を持って患者に関わっていくべきかということを、日本の歴史や現状、また課題を取り上げて明らかにすることを目的としている。
第1章では、日本の「尊厳死」をめぐる状況を、事例とともに取り上げ、「尊厳死」と「殺人」とのボーダーラインについて考察する。第2章では、「医師にお任せの医療」や、「人の命を縮めるようなことを医師は行うべきではない」という伝統的な倫理観から、自己決定権やQOLを大切にするという考えが誕生するまでの過程を挙げ、「尊厳死」と「安楽死」の違いを考える。第3章では、それでは死をみとる医療のあり方とはどうあるべきなのかということを、「全人的」観点から考え、人を肉体的、精神的、社会的そして霊的にサポートしていく必要性について論じていきたい。そして第4章では、患者本人が「真の尊厳死」を迎えるための方法として、日本尊厳死協会の取り組み内容やリビング・ウィルの与える影響を述べ、家族や医師はどのような意識で患者に関わるべきか、また国がこのあいまいなテーマにどう向き合っていくべきか、について考察する。
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