講評 |
近年増加の著しい男性介護者を取り上げたのは、介護者である息子が認知症の母を殺す、という事件が2006年に京都で起こったのに衝撃を受けたからですが、相前後してお祖父さんとお父さんはそれぞれお祖母さんとお母さんを介護しておられたのを真近に見ていたのです。なぜ男性介護者が自分が介護している人を殺すに至るのか、その介護の現実を、そして男性介護者増加の背景を知ることからこの研究は始まります。家族の形が変わり、それまでは介護者になるとは夢にも思っていなかった男性が介護者となる。その変化は、兄弟の数の変化など家族形態の変化や雇用環境の変化から影響も受け、彼らは仕事と介護の両立の難しさに加えて、世間からの低い評価にも苦しみむこと発見しました。男性介護者は、妻を介護する夫介護者と、母または父を介護する息子介護者に2分されますが、両群の共通点と相違点を調べました。文献研究の結果を確認するために祖父と父にインタビューすることは重要なステップでしたが、おそらく身内ゆえに、質問への回答を絞り込めない辛さが読みとれます。結論として男性介護者支援として、介護休暇制度の拡充、語り合いの場の設置、男性介護者自身の側の努力として、地域における日ごろからの交流などが発見されました。男性介護者の苦悩の研究のよきスタートと言えます。 |