学科 | 社会福祉学科 | ゼミ教員名 | 木原 活信 | 年度 | 2017年度 |
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タイトル | ろう者と聴者の共生に向けての一考察―「ろう文化」に着目して― |
内容 | 1995年、『現代思想』誌上で木村晴美・市田泰弘による「ろう文化宣言」が発表された。その宣言では、ろう者は日本手話という言語を用いる言語的少数者であるということ、そして、手話という言語とろう文化を共有するろう者の社会=デフ・コミュニティーが存在するということが明らかにされた。こうした宣言は障害学研究者からも注目を集めているが、障害文化の中にろう文化を含めて考えることについては疑問が残った。よって、聴者はろう者の主張を直接受けとめるべきである。ろう者との共生に向けては、聴者がろう文化宣言を始めとするろう者の主張に触れるとともに、ろう者と聴者が関わる場を持てること、社会全体として多様な在り方を容認できる雰囲気が作られること、また、異なる言語による困難性を理解した上で伝え合おうとする姿勢が必要となる。すなわち、まずは互いに異なる文化や言語のもとで生きているという多様性を認め合えることが大切であるとの結論に至った。 |
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講評 | テーマ設定は自ら考えるというのが僕の方針である。それは、テーマを自ら発見し、それを探求する過程こそ研究の第一歩であり、そこに重要な意義があると考えるからである。その意味では、今年も各自よくテーマを自分なりに模索しつつ、よく練られたテーマを考えたと思う。その結果、上記に記すようなテーマとなった。 今年の卒論のキーワードは、精神障害、聴覚障害、障害児の余暇活動、身体障害、医療ソーシャルワーク、行旅死亡人、キリスト教福祉、などと多彩であるが、そのキーワードは極めて現代的な福祉の重要課題に基づくテーマともなっている。それぞれが社会福祉学を学ぶにあたっての集大成として、これらのテーマと必然的に出合ったようであったが、鋭い問題意識をもってユニークな研究テーマに取り組めたと思う。 テーマ設定にはその時代を色濃く反映してその解決を模索したものが多いが、社会福祉学の場合、たまに学生の自らの青年期の課題を生きるために苦悩しつつ、それを必死で言語化している場合も散見される。歴史学者の阿部謹也氏が言うところの「自分のなかに歴史を読む」ということであろう。これを機にそれらの問題を更に突き止めていってもらいたいが、仮にもテーマそのものが自らの個人体験的課題に直結するのであれば、この卒論の論文執筆を通して、その問題から「解放」された自由人になることも切望したい。 ところで、テーマに付随する先行研究を整理するのには手間と時間がかかる。これに苦労してなかなか前に進まなかったものもあったが、これを丹念に進められたかどうかが論文の評価に直結してくる。今年は心配症の学生が多く、またこだわりがきつく、それゆえに最後まで必死で議論したものもあった。逆にたのもしいと思う。 今年は難解な英語文献まできっちりと読みこなして、自らの課題を明確にそこに集中させた完成度の高い論文もあった。学部生でここまで書けたことは高く評価したい。また研究者のきわめて難解な「障害文化」についての議論と正面から向き合い、「もがき苦しみ」ながらも自らの模索した結論まで導いた研究も高く評価できる。また精神障害と家族の孤立の問題に真摯に向き合った論稿も文献収集に苦労しながらも自分の主張を述べることができた。よくがんばった。また自ら、調査課題を設定し、手間と時間をかけて自分なりの独自のインタヴュー調査を実施した論文もあったが、特に考察や着眼が実に鋭くこれも大いに評価できる。また実践フィールド関心をもち、ソーシャルワーカーへのインタヴューも実施するなど明確な課題を見出した論文もあったが、その分析・考察の課題はあるにせよ、リアリティのある論文となった。また、政府の官報等の膨大な数字データをきっちりと読み解き、それをもとにあまり扱われることのなかった行旅死亡人に着目し、孤独死の現状を考察した論稿もあったが、地道な努力の結晶であり、大変な労力であり、それゆえの力作となった。また自らのこれからライフワークとして進むべき道にもなる教会におけるキリスト教福祉の役割と課題に丹念に焦点をあて、それを愚直なまでに一貫して論じきった記念すべき論文もあった。その意気込みとエネルギー、そしてその作業を大いに評価したい。 締め切りぎりぎりまで細かいところに拘り続けて厳しい論文執筆作業に苦心した者もあったが、全体として、私の厳しい注文にも自らの問題意識を軸に必死で活字にしようと本当によくがんばったと思う。今年はその意味で労作揃いであり、論文として優れていた。大学院生の学位論文顔負けの鋭い問題意識をもって新機軸を模索しようとするような論文も散見された。 今後は、この卒論執筆作業の苦労を糧にして、社会に出て行って一つのことを根気強く主体的に、深く自分の力で掘り下げていくことを続けて欲しい。 |
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キーワード1 | ろう文化 |
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