内容 |
本論文は,「家族が発達障害児と共に暮らす上で,子育ての難しさはどこにあるのだろう」という問いに対し,「家族は,発達障害児と共に暮らす上で,身体的疲労だけでなく精神的疲労も抱えながら生活しており,その中に生じる葛藤が子育てや発達障害児との関わりの難しさの要因になっているのではないか。」という仮説に向けて論じたものである。近年では,知的や発達の障害を持った児童に対する家族からの虐待などの事件がメディアにも多く取り上げられており,障害児・者を持つ家族の存在が事件を通して明らかになっている。その一方で,家族だけでなく社会の中でも家族を支えるという意味では障害児・者施設などの社会福祉施設もフォーマルな資源として増えてきている。しかしなぜそのようなフォーマルな資源が増えてきているのにも関わらず,障害児・者に対する家族による事件が増え続けているのか。社会からは見えない,明らかにされていない家族の悩みや葛藤が存在するのではないか。
そこで本論文では,発達障害児と共に生活する家族の心境や共に生活する上での課題,難しさを明らかにし,家族に対するサポートについて述べる。その中でも特にきょうだいに視点を当てて考察し,健常児兄弟との比較も加えながら実情を明らかにする。そのうえで,今後きょうだいを含めた家族にはどのようなサポートが必要であるかを考え執筆に至った。
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