卒業論文詳細

学科社会福祉学科 ゼミ教員名鈴木 良 年度2023年度
タイトル1960年代から90年代におけるマンガの中の障害表象についての研究―医学モデルから社会モデルへの転換期において―
内容  マンガ史が始まって以来、障害に関連するテーマはさまざまなマンガで描かれてきた。本研究では、障害者の描き方から、その時代ごとの障害者に対する偏見や差別の歴史を読み解くことができるかどうかを障害観の推移と共に分析した。
 この結果、1980年代以前では、障害者は排除・隔離・差別の象としてのみ描かれており、その背景には医学モデル的な障害観が一般的であったことが原因であることが分かった。    
 1980年年代初頭に、社会モデル的な障害観が出現したことで、マンガにおける障害者の描かれ方に変化が認められるようになった。作品における障害者は、排除される存在から、1)対等な人間として受け入れられる存在、2)社会に主体的に参加していく存在へと変化したことが明らかになった。
 本研究の意義は、障害観の変遷を遡りながら、時代ごとの作品がどのように障害を表象しているのかを具体的に分析することによって、障害観の変容過程を示す点にある。
講評 本研究は、日本のマンガを対象にして、障害者の描き方から、その時代ごとの障害観の推移を分析したものである。これによって、障害者への偏見や差別の歴史がどのように変容しているのかを捉えようとしたものである。
この結果、1980 年代以前では、障害者は排除・隔離・差別の象としてのみ描かれており、その背景には医学モデル的な障害観が一般的であったことが原因であることが示された。その後、1980 年年代初頭に、社会モデル的な障害観が出現したことで、マンガにおける障害者の描かれ方に変化が認められるようになった。すなわち、作品における障害者は、排除される存在から、1)対等な人間として受け入れられる存在、2)社会に主体的に参加していく存在へと変化したことを明らかにしている。
 筆者は福祉の対象となる人々が、日本のアニメーションや映画といった媒体の中でどのように描かれているのかということについて関心をもっていた。例えば、「鬼滅の刃」といった作品については、私も社会福祉の観点から分析することが可能だと考えており、安達君とはこの作品についても意見を交わしたことがある。例えば、優生思想に基づく考え方が作品の中でどのように描かれているのかということについて話したことを覚えている。
 娯楽の対象となる媒体は、人々が最も触れる機会の多いものであり、関心をもって分析される必要がある。安達君がこのような問題関心をもってくれたことは大変うれしかったし、今後彼の研究に続くメディアと障害をめぐる研究が現れてくることを期待したい。
キーワード1 マンガ
キーワード2 障害表象
キーワード3 医学モデル
キーワード4 社会モデル
キーワード5