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現在,放送業界はより効率化,利便化を図るため,収益や権限をより一層,在京のキー局に集中させている。逆に地方局は,財政の困窮による疲弊が隠せない。その一方で,行政は近年,中央から地方へ権限を移譲させる「地方分権」の議論を深めている。これは少子化,グローバル化に晒された現代日本において,中央に権限が集中することは非効率という観点から提唱された概念であり,地方に権限が移譲されると,各地多様な行政形態や制度が成立することが見込まれる。しかしながら,キー局単独では,各地方が満足し得る行政報道を提供することは難しいと推測された。そこで,地方分権の論題を提供する政府機関である,地方分権改革推進委員会が発表した提言をみたところ,国から地方に移譲される権限は多岐にわたり,地方局が市民に議題を提供するために地方分権の報道をすることは,非常に重要であることが確認できた。逆に,地方分権が進む中,地方局がその報道を怠ると,市民が地方の発展に有効な情報が得られず,地方の停滞に至るほか,さらにテレビへの無関心を加速させる危険性がある。地方分権論は,地方局にとって発展あるいは後退につながる諸刃の剣であると言える。 |