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数々の宗派(浄土真宗や浄土宗、臨済宗、天台宗、真言宗など)に分かれているが、日本には、多くの仏教信徒が何世紀も昔から存在し、それに伴い、仏教信仰にまつわる様々な絵画や建築物、彫刻などの仏教美術と呼ばれる美術品が、現在もなお大切に保管され続けている。中には、国宝や重要文化財に指定されているものもあり、その存在はわれわれ日本人の信仰に大きな影響を及ぼしていると考えられる。そしてまた、われわれに信仰をより一層深め、強める効果を持っているのではないだろうか。
そのような仏教美術の中でも、本論では、平安時代~鎌倉時代における【浄土教美術】に着目し、それらの美術品が仏教の信仰(浄土信仰)を広める重要なメディアとなっていたことを明らかにしていく。美術品としては、『当麻曼荼羅』に代表される曼荼羅や、『阿弥陀二十五菩薩来迎図』に代表される来迎図、六道輪廻の思想から生まれた六道絵、浄土宗の開祖法然上人の生涯が48巻にわたって描かれた『法然上人絵伝』を用いて、それらがメディアとなった背景やメディアとしての効果・役割を検証していく。それらの絵画が制作された時代の社会的背景や、民衆の生活と、絵画の流布は何かの関係があったのだろうか。そして、現在のように様々な電子メディア(テレビやインターネット、ラジオ)が存在しなかった当時、絵画はメディアとしてどのように役立っていたのだろうか。 |