卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名柴内 康文 年度2012年度
タイトル認知欲求と関与がアンカリング効果にもたらす影響
内容 私たちは日々、アンカリング効果の影響を受けている。認知欲求と関与とアンカリング効果の交互作用効果について、認知欲求が低い人は周辺ルートを経由した情報処理行動を行いやすい、ということが先行研究からわかった。よって彼らはある課題を推定するとき、ヒントとして与えられたアンカーに引きずられやすく、また低関与課題は高関与課題と比べて、調査参加者があらかじめ持っている情報や知識が少なく、動機づけも低いため、より周辺ルートを通りやすくなるのでは、という推測から「低関与課題において、低認知欲求者はそうでない場合に比べてアンカリング効果が起きやすい」という仮説を立てた。結果として仮説は支持されなかったが、認知欲求は比較対象の推定値にもその歪み値にも主効果としての影響は与えないこと、認知欲求の主効果がない場合、関与の効果が推定値に平均の差を生むこと、認知欲求の主効果がない場合、アンカーの効果が歪み値の平均の差を生むこと、などがわかった。
講評  試問においてそれぞれの問題について聞いたので、個別の講評は省略します。試問においては、主に二点について問うようにしました。一つは、自分自身では気づきにくいが、論文が抱えている大きな論理的欠陥についてでした。問題を明確にし、取り扱える規模に小さくしていかないと論文は完成しませんが、そのような作業の中でどうしても細かい部分にばかり目がいってしまい、大きく見たときにおかしな部分がでてきてしまうことがあります。もう一つの質問点は、論文において論証できたことをふまえて、いったいどのようなことが扱った現象、あるいは社会に対して言えるのか、ということでした。実は、この二つの問いは相互に関連しています。解明したことから、何を言おうとしているのか、それが論文を貫く太い幹、ストーリーです。この中心線を折に触れて思い出すようにすれば、細かな作業や議論をしているときも、それらの部品がどこを向いていなければいけないのか、部品間に組み合わせのおかしなところがないのか確認することができます。「木を見ている時に同時に森を思い浮かべる」ことを、これからも意識してもらえればと思います。
 試問では聞きませんでしたが、加えて、全体に記述や文献の整理などに精緻さを欠いた、チェック不足の側面が見受けられました。言うまでもないですが、精緻な作業はあらゆるものの基本です。神は細部に宿ります。それを甘く見て足をすくわれることもあります。ひとまとまりの大きな仕事を終えたいま、太い幹の意識と、細かで正確な作業の重要性に改めて思いをいたしてもらえればと思います。卒論を完成させたからこそ、ここで書いている意味もわかるでしょうし、次の大きな仕事に取りかかるときに、この経験が生きることになるでしょう。
キーワード1 アンカリング効果
キーワード2 認知欲求
キーワード3 関与
キーワード4 精緻化見込みモデル
キーワード5 情報処理行動