学科 | メディア学科 | ゼミ教員名 | 渡辺 武達 | 年度 | 2013年度 |
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タイトル | 福祉番組における障害者表現の課題と克服 |
内容 | 現在,放送されているあらゆる番組において,テーマの取り上げ方や見方はどれも似ていて,NHKと民間放送の違いもなくなってきている。その中でも,障害者を取り上げた番組では,「障害者は大変」「障害者はがんばっている」などの画一的な表現がされてきた。これは一見大した問題に思えないかもしれない。しかし,テレビで「頑張って生きる障害者」のイメージを繰り返し消費してきたことで,障害がある人もない人も,「障害者はこうであるべき」という理想像ができあがってしまい,障害者が社会生活を送る上で直面している本質的な問題について,一人ひとりが考える機会を失っている。この状況を克服するために,当事者の声がきっかけで放送が始まったのが『バリバラ』である。『バリバラ』は,従来の福祉番組が描いてこなかった障害者のエンターテイメント性――「笑い」を描き,健常者と障害者の間にある隔たりを取り払おうとしている。一般にある,障害者のイメージを取り上げた上で,従来の福祉番組の障害者表現の問題点を明らかにし,心のバリアフリーは「笑い」によって解消できるのか,その可能性を検証し論じる。 |
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講評 | 日本の放送、とくに障害者を取り上げた番組では,「障害者は大変」「障害者はがんばっている」などの画一的な表現がされてきた。しかしテレビによるこうしたイメージの形成は「障害者はこうであるべき」という理想像を作りあげやすく、障害者が社会生活を送る上で直面している本質的な問題について,一人ひとりが考える機会を失わせているのではないか。筆者はそうした疑問から、当事者の声がきっかけで始まった障害者のエンターテイメント性――「笑い」を描くNHK製作『バリバラ』に着目し、それがいかに健常者と障害者の間にある隔たりを取り払おうとしているかを、従来の福祉番組の障害者表現との相対化によって、心のバリアフリーは「笑い」によって解消できるのかという観点から論じた。メディア学科の卒論に相応しいすぐれた論考である。 【2013年度生全体への講評】 私、渡辺武達担当の2013年度卒業論文提出者は全25名で、全員の卒論が①提出期限、②テーマとキーワードの設定、③構成、④内容、⑤字数などの各条件を満たし、メディア学科生の研究成果として合格点に達していたと判断した。また提出後のゼミ恒例卒論相互批判会にも全員が出席し、4時間にわたり十分な議論を行ったので、同志社大学社会学部メディア学科卒業生として認められる勉学成果を挙げたものであると認定した。しかし提出にいたるまでに問題がなかったわけではない。その第1は、年々、就職活動期間が長引くようになり、3回生秋学期から4回生秋学期前半まで卒論準備に十分な時間をかけることが出来ない学生が大半であったことである。これは大学だけでは解決できない問題を含んでいるが日本社会の教育環境確保という点から危惧すべき状況があるということである。第2に、その結果、卒論執筆完了が遅くなり、指導教授による添削時間が充分に取れず、きめ細かな指導が満足のいける程度まですることが叶わなかった状況が生まれているということである。しかしそうした厳しい環境にもかかわらず、卒論ゼミ登録学生はよく頑張ったと思う。 |
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キーワード1 | 福祉番組 |
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キーワード2 | 障害者表現 |
キーワード3 | 優生思想 |
キーワード4 | 笑い |
キーワード5 | 期待の地平 |