卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名渡辺 武達 年度2013年度
タイトル大阪ジャーナリズムの存在意義~黒田清の記者活動から~
内容 『朝日新聞』『毎日新聞』という大阪二大紙によって市民のための大阪ジャーナリズムは形成された。戦後、軍部のプロパガンダとなってしまった新聞社は、それぞれ大転換をし、二社は、元々の精神である〈不偏不党〉〈報道主義〉に加え、〈権力の監視〉という意識を持つようになった。1970年代からは、大阪ジャーナリズムの代名詞である元大阪読売新聞記者・黒田清が独自のジャーナリズムを体現した。昭和の五五年体制、高度経済成長を経て、東京一極集中が進みきった現在では、大阪ジャーナリズムという言葉はあまり聞かれなくなってしまったが、マスコミに対する不信感を払拭する為に、地理的にも東京から離れている大阪メディアの〈権力の監視〉は不可欠である。
講評 新聞・テレビを問わず、マスメディアはオーディエンス(視聴者・読者)の支持なしには継続がむずかしいが、同時に政府との関係など、多様な外部の組織的干渉にたえずさらされている。戦前の『朝日新聞』『毎日新聞』という大阪二大紙が今日の日本のメディアの基礎になっているがその特徴はいっぱんに「大阪ジャーナリズム」といわれているものである。筆者はその形成過程での軍部のプロパガンダ機関化、元々それらがダブルスタンダードとしての〈不偏不党〉〈報道主義〉に加え、標榜される〈権力の監視〉機能にも注目し、その良質的部分が1970年代の大阪ジャーナリズムの代名詞である元大阪読売新聞記者・黒田清の活動にあるという視点からのジャーナリズム論を展開した。マスコミに対する不信感を発信者側から払拭しようとしたすぐれた論考である。
【2013年度生全体への講評】
私、渡辺武達担当の2013年度卒業論文提出者は全25名で、全員の卒論が①提出期限、②テーマとキーワードの設定、③構成、④内容、⑤字数などの各条件を満たし、メディア学科生の研究成果として合格点に達していたと判断した。また提出後のゼミ恒例卒論相互批判会にも全員が出席し、4時間にわたり十分な議論を行ったので、同志社大学社会学部メディア学科卒業生として認められる勉学成果を挙げたものであると認定した。しかし提出にいたるまでに問題がなかったわけではない。その第1は、年々、就職活動期間が長引くようになり、3回生秋学期から4回生秋学期前半まで卒論準備に十分な時間をかけることが出来ない学生が大半であったことである。これは大学だけでは解決できない問題を含んでいるが日本社会の教育環境確保という点から危惧すべき状況があるということである。第2に、その結果、卒論執筆完了が遅くなり、指導教授による添削時間が充分に取れず、きめ細かな指導が満足のいける程度まですることが叶わなかった状況が生まれているということである。しかしそうした厳しい環境にもかかわらず、卒論ゼミ登録学生はよく頑張ったと思う。
キーワード1 大阪ジャーナリズム
キーワード2 黒田清
キーワード3 報道主義
キーワード4 権力の監視
キーワード5 不偏不党