内容 |
多くの人に親しまれる大河ドラマを研究題材に選ぶことで、純粋に装束とメディアの描かれ方を考えることが出来ると考えた。特に史実に忠実だと言われた2012年NHK大河ドラマ『平清盛』を通して、女房装束がどれほど忠実に描かれているのかを史実に基づいて考察し、大河ドラマの立ち位置をふまえた上で、なぜ誤った描かれ方がなされるのか、今後、装束などの平安風俗を正しく後世に伝えていくために、テレビでの時代ドラマを検証した。しかし大河ドラマの立ち位置を考えると、大河ドラマの風俗の表現が誤っているのは、大河ドラマが「ドラマ」つまり「フィクション」である限り、ストーリーや演出が主で、時代考証はドラマのリアリティーを出す役目を担っているにすぎないという側面があった。とはいえ、装束はストーリーや演出を邪魔することがない。同時にその装束に誤りがあるということは、TPOや地位をあらわすために用いられていたのに、背景を理解しないままに、見栄えや美しさを優先してしまった結果だと思われる。これは裏を返せば、考証が忠実に行われれば、より史実に忠実な装束の画をとる余地があるということだ。平安風俗の正確な文化の継承には視覚的媒体は必要不可欠であり、「歴史」ドラマである以上、史実の重視は大切であり、ストーリーと史実のおりあいをつけながら、正しい知識を持っている人が時代考証をしていかなければ、伝統の継承は難しい。 |