卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名佐伯 順子 年度2016年度
タイトルフィルムツーリズムによる地域振興の可能性
内容 映画やアニメ、ドラマのロケ地を訪れ観光する行為全般のことを「コンテンツツーリズム」と呼ぶ。その中でも、映画のロケ地巡りのことをフィルムツーリズム、アニメのロケ地巡りのことは聖地巡礼を称されることが多い。日本は、海外諸国と比べると、フィルムツーリズムが聖地巡礼と比較して盛り上がりをみせていない。その原因は、①実写邦画の興行収入がアニメーション映画と比べて低いこと、②フィルム・コミッションの設立が海外諸国と比べて遅かったこと、③聖地巡礼と比較すると、ロケ地の情報を積極的に発信し、観光地化に協力するようなファンの数が少ないこと、以上の三点が大きな理由であることが分かった。日本におけるフィルムツーリズムが聖地巡礼のように成長していくためには、政府やフィルム・コミッション、映画づくりに携わる人々だけではなく、映画を鑑賞する私たち一般人が、映画をただの芸術作品として捉える以外の視点を持つことが重要なのではないだろうか。
講評 佐伯ゼミ2017年度生は、音楽、映画、テレビCM等の視聴覚的な媒体を、社会的背景との関わりから論じ、社会的データ、独自のアンケート調査の結果分析に、映像分析、言語情報の表象分析、言説分析を加え、多彩な方法論を駆使して、修士論文と同等の優秀な成果があがった。質的分析、量的分析の双方を駆使するのが佐伯ゼミ卒業論文の特徴であり、評論と論文の違いも、大学教育にふさわしいレベルで正確に指導した成果である。
本論文は、音楽を聴く行為が、レコードの購入からCD、さらにデジタル配信サービスへとメディア環境の変化とともに変容していく過程を考察し、最新の定額性音楽配信サービスが、旧媒体にかわって音楽聴取の主流になりえるか否かについて、文献調査とアンケート調査の方法論を融合して論じたものである。同世代のオーディエンスに行った独自のアンケート調査と、日本レコード協会、日本生産性本部等の外部機関の調査結果を総合的に考察し、音楽を「聴く」サービスとしての音楽配信サービスは今後主流になり得るものの、音楽を「所有」する喜びを与える意味でのレコードやCDの社会的意味は消滅しないであろうと結論づけた。受け手がどのような動機づけによって音楽を享受するかによって、“モノ”か情報かのすみわけがなされるという議論は、実証的データに基づく説得力があり、「音楽のデジタル移行への過渡期」としての現代の日本社会における音楽文化のありかたを、芸術史、音楽史とは異なる、メディア学的、社会科学的見地から論じたものとして、すぐれた研究成果をあげた。
キーワード1 フィルムツーリズム
キーワード2 コンテンツツーリズム
キーワード3 聖地巡礼
キーワード4 フィルム・コミッション
キーワード5 『らき☆すた』