卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名池田 謙一 年度2017年度
タイトル復興報道の被災地への影響 ~NHKスペシャル「帰還した町で~ 原発事故7年目の闘い」から~
内容 本研究では、被災地での動物被害を扱ったNHKスペシャルは、視聴者の浪江町への帰還意欲を低下させたのか、また事実以上の恐怖を煽った箇所があったのか、過剰表現はあったのかについて明らかにすることを目的とし、浪江町に帰還した人、浪江町に帰還していない人、京都府に避難した人、浪江町役場(行政)、同志社大学生(第三者)、NHK(制作者)の6グループを対象に、約30人にインタビューおよびアンケート調査を行った。仮説として、番組ではイノシシの映像が頻繁に扱われ、恐怖の対象として描かれていることが、視聴者の浪江町への帰還意識の低下に影響したのではないかと予想した。結果、帰還を妨げている要因は、動物被害よりも買い物や医療施設の不十分さが大きいことが分かり、動物被害を扱ったこの番組は住民の帰還意欲の低下には影響していないと結論付けた。一方、3点視聴者が過剰に受け取っている箇所があることが明らかになった。
講評 今年は、インターネット調査による合同の卒論データの取得以外に、さまざまな手法でデータを取得し、卒論に結びつけたものがあった。テレビ報道を提示し、テレビのインパクトについてのインタビューをしたものもあれば、ドラマの登場人物の名前と性格の相関性についての検討もあり、ツイッターのリツイートの動機についてのインタビュー、さらにはインターネット調査の分析とインタビューを合わせたものもあった。
こうした点で、目的に合わせてゼミ生が適切と思われる実証の方法にこだわった点はよかったと思う。また、インターネット調査の中での仮説検証についても、実験手法を用いた分析も含めて、工夫されたものがあった。
これらは評価できる点だが、一方で、仮説の検証がシンプルでなくどこが分析の肝心な点かわかりにくい、仮説が検証できなかった場合の原因の考察が甘い、といった問題もしばしば目に付いた。卒論の提出が12月の後半でとても早く、ネット調査から分析の時間が十分に持てなかったためであるとも考えられるが、社会に出れば、同様の時間の制約下で結果をきちんと出す、問題があればしっかり対
処する、といったことが求められるので、卒論の反省を踏まえて、今後、活躍してほしい。
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