内容 |
本稿では、過去3回のAIブームによって発生した技術的変化と社会的変化を紐解き、それぞれの時代のSF映画における未来像やAI表象との関連性を考察した。
序章では、過去に行われてきた様々な未来予測の事例を取り上げ、本稿で扱う未来予測の学術的意義を明確にしている。
第1章から第3章では、表象分析やSF作品に関する先行研究例を概観した上で、本稿におけるAIの厳密な定義を定めた。
第4章では、AIブーム期である60年代、80年代、2000年代以降の時代背景とAI表象の分析を行なっている。第2,3節では、『2001年宇宙の旅』を題材に、当時のAIの技術的限界やそれに対する懸念がAI表象にも見られることを指摘した。第4,5節では、エキスパートシステムの普及に伴う80年代の社会変化を雇用統計を用いて分析し、『ターミネーター』を中心とした当時のSF映画に見られる、AIに対する過度な恐怖化と抽象化傾向との関連性を論証した。第6,7節では主に『エクス・マキナ』を取り上げ、第三次AIブーム期において、AIの表層的な「人間らしさ」に隠された、実体としての異質性に気付けない人間側の問題点を強調するような表象が見られることを示した。更に、フィクション的な理想像に影響されたAIサービスによって、同様の問題が社会に広がっている現状を明らかにした。 |