卒業論文詳細

学科教育文化学科 ゼミ教員名兒島 明 年度2023年度
タイトル韓国人の男性留学生が経験する兵役による「断絶」問題
内容  本稿では、インタビュー対象者のライフストーリーを通じて、韓国の「兵役」が韓国人の男性留学生に及ぼす影響に注目して検討した。得られた知見は以下の三点に整理できる。第一に、韓国人の男性留学生は兵役により、「断絶」問題を経験していた。「断絶」は大きく3つの形態を見せていた。すなわち、人間関係においての断絶、学業での断絶(専攻知識の忘却、日本語の忘却、勉強の仕方の忘却)、時間の断絶(時間の断絶による消極性の発現)である。 第二に、兵役制度がない日本に在住している留学生は、韓国の兵役制度により、日本国内で行政的に不便さを経験せざるを得なかった。第三に、韓国人の男性留学生は兵役について、必ずしもポジティブなイメージは持っていなかったが、「韓国」という国家の特殊性に基づいた、「忍耐」が必要な「通過儀礼」の場という認識を共有していた。
講評 「兵役」は日本における韓国人男性留学生が共通して直面する問題です。しかしながら、それが留学生に実際にどのような影響を及ぼしているかについて、日本社会側の理解が十分とは言えません。本論文では、日本の大学への留学中に兵役を経験した韓国人男性留学生6名へのライフストーリー・インタビューに基づき、留学と兵役が交差する経験の特徴をきわめて丹念に描きだしています。「断絶」という概念を軸に、豊富な語りに基づいて展開される分析と考察には説得力があり、韓国人男性留学生の経験の固有性について深い理解が得られると同時に、留学生の経験を理解するにはトランスナショナルな社会空間への目配りが必要なことに気づかされます。
キーワード1 韓国
キーワード2 兵役
キーワード3 軍隊
キーワード4 断絶
キーワード5 留学生