内容 |
本稿では、今日の「BLブーム」のきっかけとして語られるテレビドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日、2016年)の分析を行った。男性同性愛を扱ったテレビドラマが、ヒットの裏でいかにオリエンタリズム的な眼差しで同性愛者を描いているかを明らかにしている。
本作品において同性愛者は、異性愛者とは明確に書き分けられながら、異性愛のパロディをなぞっている。そのことで彼らは、異性愛を追随する存在として他者化、序列化され、異性愛者=「われわれ」の一部として組み込まれていた。こうして「われわれ」に組み込まれた同性愛者は、現実世界で彼らが直面する諸問題ではなく、「われわれ」にも当てはまる問題を投げかける存在となった。それにより、男性同性愛が「他者」の話から「われわれ」の話に昇華し、より多くの視聴者に内面化され、社会に浸透したと考えられる。
男性同性愛を異性愛と同様に受け入れて描く送り手の姿勢には、社会的な「正しさ」が窺える。しかし、本作品で同性愛者のキャラクター達がなぞらされた異性愛の「あるある」要素こそが同性愛においても主導的地位にあるだろう、という異性愛者による序列意識の表れを、指摘せざるを得ない。 |