学科 | メディア学科 | ゼミ教員名 | 勝野 宏史 | 年度 | 2023年度 |
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タイトル | 第二次古着ブーム ? 古着を通した自己表現 |
内容 | 本稿では、古着と自己表現の観点から現代の第二次古着ブームの社会的要因を考察した。 まず、ファッションと自己表現の関係として、我々は衣服によって自己のイメージを補っていること、自己のイメージは他者の視線によって形成されること、ファッションを通した自己形成は現在主義的な流行を追うだけの無根拠な行動であることが先行研究において指摘されていることを挙げた。 ファッション業界の飽和や衣服の記号としての価値喪失によって、既製服では自己イメージの補完が難しくなり、SNS等によって人々はより他人志向化し、流行循環は加速、流行自体が曖昧化した。こうした中で、古着の、積み重ねてきた時間によって流行に左右されない「時間的普遍性」が容易に自己表現できる手段として顕在化し、流行の現在主義を打ち破るという意味で、自己形成のあり方を変えたことを第二次古着ブームの社会的要因として指摘した。 また、古着系に定位することが自己形成の効率の点で有効であること、古着屋が古着に価値を与える媒体として機能していることを指摘した。 |
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講評 | 今年度は多様なテーマからなる16の卒業論文が提出され、大きくは以下のカテゴリーに分けることが出来た。1.ポピュラーカルチャー(ファッション・音楽)2.テクノロジーと社会・文化変容(AI・アート・ゲーム・プラットフォーム)3.表象・イメージ(ジェンダー・人種・地方・国家・宇宙)4.消費社会・新自由主義(アイデンティティ・消費行動)。興味深いことに、最終の口頭試問において明らかとなったのは、ほとんどの論文が何らかの形で「変容」「つながり」「存在の不安」という問題意識を有しているということであった。本ゼミにおいて卒業論文執筆の際の目標として繰り返し強調してきたのは、トピック重視の狭い範囲で明快な議論を展開することではなく、具体的な現象とその分析の往還の中で自分なりの問いを見出し、その問いを追求する中でさらなる大きな問いにたどり着くということであった。個々それぞれが独自のテーマに着目しながらも、上記のような共通の問題意識を共有することが出来たことは、ゼミ全体での議論を通じてそれぞれの研究が豊かになったからではなかろうか。今後の進路においても、この経験が各自の思考や表現の基盤となり、より幅広い視野で社会に貢献していく素地を築いたと信じている。コロナ禍での入学となり、様々な形の不安や不便があったにもかかわらず、その間蓄積してきた知識と経験を結集させ各論文を完成させた学生たちの努力と成長に心からの敬意を表します。 |
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キーワード1 | ファッション |
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キーワード2 | 自己同一性 |
キーワード3 | 古着 |
キーワード4 | 流行 |
キーワード5 | メディア |