卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名千田 忠男 年度2011年度
タイトル企業城下町の誕生とその変容
内容  企業城下町とは、あたかも近世城下町の領主のように大企業が都市に君臨しているさまからつくられた用語であり、特定の大企業ないし同系列の企業グループが立地することによって発展し、そうした企業の存在なくしては都市機能が維持されない都市と定義することができる。したがって、そこで行われた工業開発における事実関係を丹念にみていくことで、産業に特化したアンバランスな都市計画がどういうものだったのかを解き明かすことができるだろう。そして今回の論文では企業城下町である茨城県日立地区の変遷をみることによってこの都市計画を具体的に述べていく。
 第1章では日立製作所の生みの親となった久原鉱業所日立鉱山の開発と鉱山町の形成について述べる。第2章では日立鉱山の経営下で日立鉱山の電気機械修理工場だった時代から、独立し、芝浦製作所、三菱電機、富士電機とともに重電4社の一角を占めるまで発達した時代までを述べる。第3章では大量生産、大量消費がもてはやされ、俗に言う日本的経営が良しとされてきた時代について述べる。第4章ではバブル崩壊後、日立がどのような対応をとってきたのか、そしてこれから企業城下町としての日立地区の展望や課題を考える。
講評  12編の卒業論文を指導し、あわせて評価した。そのいずれも現代の私たちが直面する重要なテーマを取り上げて、適切な方法で究明し的確な結論を得て、論文に仕上げている。
その特徴をみると、6編において雇用労働問題が取り上げられていた。また、日本経済の発展を図るテーマが3編、職業教育の課題が2編、芸術における労働表現の課題が1編において、積極的に取り上げられていた。さらに方法についてみると、10編において文献調査が主として
用いられ、2編において聞き取り調査も採用されていた。最後に、5編において国際的諸事情を視野に入れた研究が行われた。
個々の論文についてつぎのよう視点から評価した。
(1) 政策的解決を図るべき課題について、文献調査や社会調査を経て問題状況を事実として把握し、問題の性質の則した解決策が提起されているかどうか。そうした研究手続きが意識されているかどうか。
(2) 価値判断の分かれる場合には事実を確認する手続きを慎重的確に進めることが重要であること、仮に誰もが認識できる事実であっても解釈は幾通りもあり得るということ、などを十分に理解したうえで、合理的な解釈を導こうとしているかどうか。
(3) 問題解決に向けて事実根拠にもとづいて、なおかつ実現可能な政策を立案しようとしているかどうか。
(4) 以上に加え、これから社会で活躍する際に期待される意志と意欲を表現しているかどうか。
以上の視点から12編の論文を評価したところ、いずれもすぐれた研究成果をまとめていると判断できた。
キーワード1 企業城下町
キーワード2 都市計画
キーワード3 日立地区
キーワード4
キーワード5