学科	産業関係学科	ゼミ教員名	石田　光男	年度	2011年度
タイトル	計画経済期における中国国有企業の労使関係

内容

中国という国が社会主義という政治体制の下で、一体何が労働者を職場へと向かわせたのかを知るために、計画経済期の中国の雇用分配制度、生産労務管理、党委員会について論じる。その先導役として、李捷生の『中国「国有企業」の経営と労使関係』を選択した。賃金制度は、「能率主義」的分配と「平等主義」的分配が交互に現れ、生産労務管理では、制定した制度が、相次いで生産性の低下を招く事態に陥ってしまう。また共産党は労使関係に対して非常に強い権力を持つことになる。しかしながら、その権力も徐々に弱体化してゆく。このように計画経済期は、全体を通してルール作りに混迷を極めた時代である。その中でも中国政府は制度によって問題を解決しようとし続けた。にも拘わらず政府、党による労働力の動員は、最後まで日の目を見ないまま、計画経済期は終焉を迎えることとなる。李捷生の文献を通して、計画経済期下の中国の賃金・労使にかかわるルールを概観する。

講評

卒業論文は一人一人の言葉の正しい意味での自己紹介だと思う。「わたしはこういう人間です」「これ以上でもこれ以下でもありません、私という人間は」ということをどうしても表現することになってしまうのが言葉の本性だからである。言葉遣いの現在の到達点、それが各人の卒業論文である。 　そこからが君たちの出発である。 　いくつかのコメントをしたい。 第一、参考文献からの引用は丁寧にということを強調した。私は正直な論文が好きだ。だから他者からの引用と自分自身の言葉とを仕分けする作業は正直な自分になる作業である。その結果、みすぼらしい自分の発見に行き着くことが多いとは言え、かすかな輝やきをたたえている自分もそこにはかならずいるはずだ。その輝きを火種にこの人生を歩むのだ。 第二、実証的な研究であれ、文献研究であれ、自分を横に置いた論文はよくない。直ぐに反論があろう。実証研究であれば、事実に虚心に向かえば向かうほど自分などを出しようがないではないか、文献研究であれば文献の論旨を正しく追えば追うほど自分などを出しようがないではないかと。しかし、無限な事実の中からどんな事実が重要だと観るかに自分が現れるのだし、文献研究であればマル写しでない以上、自分の読み方が現れるのだ。その自分の現れ方、あるいは表し方が自分の個性であり、その説得力が自分の力量なのだ。そもそも自分を隠し続ける勉強などは面白くもないはずだ。勉強は打算でやるのではなくて面白いからやるのだ、ということをわかって卒業して欲しい。 第三、研究（勉強）と社会での仕事の関係。研究（勉強）は卒業でお終い、4月からは仕事という別世界だという理解は浅はかである。仕事を始めてみて本当の勉強が始まったと先輩たちは言う。実は地続きなのだ。全く二つの世界が別物であれば、いいですか、大学での勉強は無用だということになる。その気配が濃厚に漂っているのが現代日本ではあるけれど。仕事には実践が伴うが、勉強には認識という脳細胞の活動はあっても実践が伴わないという区分が先の言明の根拠になっているが、認識と実践とはさほど機械的に区分できない。「こう考える」、だからこうしてみようというように地続きになっている。 　偽りのない自分の到達点としての卒業論文を直視して、そこから自らの研鑽を積み上げていって欲しい。

キーワード1	労使関係
キーワード2	中国
キーワード3	社会主義
キーワード4	共産党
キーワード5