学科	産業関係学科	ゼミ教員名	石田　光男	年度	2011年度
タイトル	中国の工場労働者の暮らし

内容

この論文では、Chris King-Chi Chan著Challenge of Laborを読み解いてまとめるということをしている。Challenge of Laborの内容は中国における移民労働者達の村での暮らしぶり、ギャング達が労働者たちにどういう風に関わっているか、工場ではどのように労働者たちが働いているかということが書かれている。そして、これらの内容はChris King-Chi Chan氏が実際に中国に渡り、移民労働者達と生活を共にし、移民労働者達やギャング達と実際に話して調査したものをベースに書かれている。 　Challenge of Laborは石田ゼミにおいて教材として用いられたものであるのだが、英語で書かれているためにゼミの時間だけでは足らず、読み飛ばしてしまったところもいくつかある。そういったところも含めて、改めて読み直し、日本語に起こしてまとめたものが本稿である。まとめた順番としては、氏が滞在した村の説明、氏が一緒に滞在した夫妻の説明、彼らが働く工場の説明を最初にまとめ、次に村で影響力のあるギャング達の説明、最後に実際に工場でどのように労働者たちが働いているか、工場内での人間関係などをまとめた。本稿を通して、氏の中国における移民労働者達の暮らしぶりを解き明かそうという熱意が伝われば幸いに思う。

講評

卒業論文は一人一人の言葉の正しい意味での自己紹介だと思う。「わたしはこういう人間です」「これ以上でもこれ以下でもありません、私という人間は」ということをどうしても表現することになってしまうのが言葉の本性だからである。言葉遣いの現在の到達点、それが各人の卒業論文である。 　そこからが君たちの出発である。 　いくつかのコメントをしたい。 第一、参考文献からの引用は丁寧にということを強調した。私は正直な論文が好きだ。だから他者からの引用と自分自身の言葉とを仕分けする作業は正直な自分になる作業である。その結果、みすぼらしい自分の発見に行き着くことが多いとは言え、かすかな輝やきをたたえている自分もそこにはかならずいるはずだ。その輝きを火種にこの人生を歩むのだ。 第二、実証的な研究であれ、文献研究であれ、自分を横に置いた論文はよくない。直ぐに反論があろう。実証研究であれば、事実に虚心に向かえば向かうほど自分などを出しようがないではないか、文献研究であれば文献の論旨を正しく追えば追うほど自分などを出しようがないではないかと。しかし、無限な事実の中からどんな事実が重要だと観るかに自分が現れるのだし、文献研究であればマル写しでない以上、自分の読み方が現れるのだ。その自分の現れ方、あるいは表し方が自分の個性であり、その説得力が自分の力量なのだ。そもそも自分を隠し続ける勉強などは面白くもないはずだ。勉強は打算でやるのではなくて面白いからやるのだ、ということをわかって卒業して欲しい。 第三、研究（勉強）と社会での仕事の関係。研究（勉強）は卒業でお終い、4月からは仕事という別世界だという理解は浅はかである。仕事を始めてみて本当の勉強が始まったと先輩たちは言う。実は地続きなのだ。全く二つの世界が別物であれば、いいですか、大学での勉強は無用だということになる。その気配が濃厚に漂っているのが現代日本ではあるけれど。仕事には実践が伴うが、勉強には認識という脳細胞の活動はあっても実践が伴わないという区分が先の言明の根拠になっているが、認識と実践とはさほど機械的に区分できない。「こう考える」、だからこうしてみようというように地続きになっている。 　偽りのない自分の到達点としての卒業論文を直視して、そこから自らの研鑽を積み上げていって欲しい。

キーワード1	中国
キーワード2	労働者
キーワード3	工場
キーワード4	生活
キーワード5	ギャング