学科	産業関係学科	ゼミ教員名	石田　光男	年度	2014年度
タイトル	「GMの経験【日本への教訓】」を読んで

内容

今回、卒業論文のテーマとして選んだのは、私の指導教員である石田光男先生による著書「GMの経験」である。なぜ、この本を選んだのかと言うと、それは私がこれまで大学で学んできた産業関係論(労使関係論)とは何か、そしてどうあるべきなのかということを卒業前にもう一回勉強したいと考えたからである。石田先生が日頃から仰っている「平凡の非凡」や「難しい本であっても我慢して鼻をつまんでも読め、そうすれば分かることがある」という言葉を胸にこの難書を粘り強く読み進めて出来るだけ理解していきたい。こうした力や姿勢は社会人にとって非常に大事なことかもしれない。このまま卒業してしまうと苦手なことであっても我慢強く取り組むということをあまりせずに社会に出ることになってしまうかもしれない。これは危険である。そこで私が難しくて逃げ出したくなる本である「GMの経験」を読んで理解することで自分の糧としたい。ここで重要視したいのは、私自身この本が苦手な理由として言葉が難解であるということがある。なので、この論文では難しい表現であってもなんとか自分の言葉で紡いでいくことに重きを置きたいと考えている。

講評

卒業論文は一人一人の言葉の正しい意味での自己紹介だと思う。「わたしはこういう人間です」「これ以上でもこれ以下でもありません、私という人間は」ということをどうしても表現することになってしまうのが言葉の本性だからである。言葉遣いの現在の到達点、それが各人の卒業論文である。 そこからが君たちの出発である。 いくつかのコメントをしたい。 第一、参考文献からの引用は丁寧にということを強調した。私は正直な論文が好きだ。だから他者からの引用と自分自身の言葉とを仕分けする作業は正直な自分になる作業である。その結果、みすぼらしい自分の発見に行き着くことが多いとは言え、かすかな輝やきをたたえている自分もそこにはかならずいるはずだ。その輝きを火種にこの人生を歩むのだ。 第二、実証的な研究であれ、文献研究であれ、自分を横に置いた論文はよくない。直ぐに反論があろう。実証研究であれば、事実に虚心に向かえば向かうほど自分などを出しようがないではないか、文献研究であれば文献の論旨を正しく追えば追うほど自分などを出しようがないではないかと。しかし、無限な事実の中からどんな事実が重要だと観るかに自分が現れるのだし、文献研究であればマル写しでない以上、自分の読み方が現れるのだ。その自分の現れ方、あるいは表し方が自分の個性であり、その説得力が自分の力量なのだ。そもそも自分を隠し続ける勉強などは面白くもないはずだ。勉強は打算でやるのではなくて面白いからやるのだ、ということをわかって卒業して欲しい。 第三、研究（勉強）と社会での仕事の関係。研究（勉強）は卒業でお終い、4月からは仕事という別世界だという理解は浅はかである。仕事を始めてみて本当の勉強が始まったと先輩たちは言う。実は地続きなのだ。全く二つの世界が別物であれば、いいですか、大学での勉強は無用だということになる。その気配が濃厚に漂っているのが現代日本ではあるけれど。仕事には実践が伴うが、勉強には認識という脳細胞の活動はあっても実践が伴わないという区分が先の言明の根拠になっているが、認識と実践とはさほど機械的に区分できない。「こう考える」、だからこうしてみようというように地続きになっている。 　偽りのない自分の到達点としての卒業論文を直視して、そこから自らの研鑽を積み上げていって欲しい。

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