卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名上田 眞士 年度2014年度
タイトル働く若者の苦悩
内容 就職活動を行うなかで、たくさんの企業に出会い、選考をうけた。そして何十回と先行を受け、何十社もの会社から不採用通知をもらった。そして、「七五三現象」を思い出すたびにいたたまれない気持ちになったことから、「離職率」ということを中心に今回の卒業論文を書くことにした。離職率が高くなってしまった原因や背景を研究するうちに、若者と企業のミスマッチを防ごうと政府が提案した2つの政策①YES-プログラム、②社会人基礎力を知った。しかし、これらは成功をおさめることができなかった。その大きな原因は、その政策が教育現場に圧力をかけただけで、本当の意味で浸透しなかったことがあげられる。景気回復により、就職状況は回復するも、離職率はいまだ高い水準を保っている。そこで離職率を低下させる解決案、①一括採用から職種限定採用へ、②ワークシェアリングを提案する。そして、さいごに自分が就職活動を通して、感じた離職率が高くなってしまう原因は、「労働者にとって良くない労働環境を、企業理念や目先の目標達成により正当化している」ことにあるのではないかと感じたことを述べている。
講評 提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「若年就労問題」「インターンシップ」「女性活用・女性活躍推進」「過労死・ブラック企業」「ワークライフバランス」「企業の生き残り戦略」「労働規制緩和」等々となっています。これらのテーマに表出しているものは,一方での経済や経営のグローバル化の進展,また他方では国内での種々の労働問題の発生という,現代日本の雇用社会が展開しているダイナミズム,そこでの当事者たちの苦闘に他なりません。たしかに個々の論文ごとに,問題の掘り下げや論理的な記述という点では精粗もありました。しかし基本的には,卒論作成という課題に対して,困難な就職活動の中でもゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。そこで,ここでは一年を通した卒論作業を締めくくる講評として,研究や考察に際して私が大事だと思うポイントを,簡単に指摘しておきたいと思います。

大切なことは,一つには,論文の良し悪しの重点は,問題把握や理解の深さ,広さにこそあるのだということです。そして,そのためにも本質的に批判的な研究や考察態度を持って欲しい,そうした要望です。それは決して簡単なことではありませんが,少しかみ砕いて言えば,ただ単に日本的雇用の非を鳴らすだけではつまらない,なぜ現実はそうたらざるをえないのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい,あるいは,ただ単に日本的経営を称賛するだけではつまらない,それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで洞察の目を向けて欲しい,そういうことになるでしょう。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤にこそ,考察の焦点があるのだということです。

いま一つは,まとめや考察にあたっては,無理矢理な政策提言などを行わないこと,むしろ疑問点を掘り下げて提示することの方が,ずっと大事だということです。政策提言の価値自体を否定するつもりは毛頭ありません。問題は,安易に政策提言してしまう習い性には,「わかったつもりになる」という悪弊が結びつくということでしょう。漠然として曖昧模糊で,何を質問して良いのか判らないという状況から,具体的に解かれるべき問題が見えて来る。おそらくそれが「理解が進む」ということでしょう。そうした態度を皆さんには大事にして欲しいと思います。

とはいえ,「言うは易く行うは難し」。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけだ,そのように考えて下さい。

<以上>
キーワード1 若者
キーワード2 離職率
キーワード3 長時間労働
キーワード4
キーワード5