内容 |
近年、新しい人事管理として人的資源管理というものが注目されてきた。人的資源管理はかつての欧米の人事管理の問題点を解決すべく生み出され、「人」に着目した人事管理である。
しかしながら、日本が従来から行ってきた人事管理も「人」に重点を置いた人事管理であった。人的資源管理と日本が従来から行ってきた人事管理は互いに「人」を重要視している。両者に違いはあるのだろうか。そこで、両者に違いはあるかどうかを検討することを本稿の目的とする。検討のために人的資源管理と日本型人事労務管理を対比させてみよう。人的資源管理はかつての欧米の人事管理と異なり人を中心として積極的な管理活動を行うようになっている。労使間の対立もできる限り減らし、労使の問題意識を共有しようとする。他方、日本型人事労務管理は暗黙の雇用保障によって労使の協力関係を築き上げ、経営者と労働者の向かう方向を統一しようとする。比較の結果、選抜、人員の訓練・育成、報酬、職務設計、雇用、対立の調整、関係の特性といった点で類似性がみられた。人的資源管理と日本型人事労務管理では形づくられた経緯や趣旨は異なるが根本にあるルールは同じであり、人的資源管理も従来から日本が保持してきた理念と同じ理念を持っているのだ。したがって、人的資源管理が日本に新しい風を吹き込むことはない。 |