卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名寺井 基博 年度2015年度
タイトル日本企業で女性人材が育ち難い要因 ? ? ? ? -日本の業績管理の視点から-
内容 長年女性活躍推進事業のテーマは盛んに取り上げられ、近年女性就業率の上昇も著しい。そんな中、多くの課題解決策は育児休業取得や長時間労働の是正などの政策論が中心に示される一方、根底に存在する現場の実態に焦点を当てた「実体的ルール」に着目されることは少なく、どこか一様的な印象を受ける。調査では「ルール」に基づく産業関係学の視点から『現在の日本の業績管理の仕組みでは、女性活躍推進は困難である』という仮説たて、既存の研究で述べられてきた政策論を批評する形で、日本企業において女性人材が育ち難い原因について議論した。その結果、女性の昇進意欲・男性の意識が業績管理・評価制度に基づいて決定されること、長時間労働問題の背景に、職能制・部門別業績管理体制・動態的課業配分などの日本の業績管理の特徴や個々の労働者に与えられた仕事量と求められる生産性の高さが関係していることを明らかにした。そこから、就業継続とキャリア継続は異なること、労働時間の決定について「実体的ルール」として各自が理解することの必要性を論じている。
講評 卒業論文の執筆にあたっての指導ポイントはつぎの2点である。
第1は主要な先行文献を選んで精読するである。オリジナルな見解にこだわって書こうとすると何も書けなくなる。それよりも文献を丹念に読むことで、問題関心から結論に至るまでの筆者の思考の道筋を辿ってもらいたい。断片的な知識の習得にとどまらず、「分かる」という認識水準を体感し、分かるためにはどのように考えなければならないかを経験してもらいたかった。その意味で文献の選択が重要になる。
第2は、先行研究の諸見解を自分が組み立てた枠組に沿って論文の形式で書くことである。この点については主として表題設定と出典の明記に重点を置いた。論旨が曖昧になって書き進められなくなる事態を回避するために、テーマ設定時にできるだけ論点を絞った表題を考えるように助言した。また、自らの考えの大部分が先行研究の成果であることを自覚し、これらの先行研究に敬意を払う意味でも出典の明記は不可欠である。この点に気を付けて文献を整理すれば基本的に論文の形式になる。
提出された12本の論文は上記の点について概ね一定の水準を上回っている。論理展開がやや強引な点など荒削りな面はあるものの、地道な努力が実を結んだ論文や先行文献の整理を踏まえて筆者の思いが切々と綴られた論文が複数見られた。論文執筆は文献を介した自分自身との対話に他ならない。論文の質はその対話の深さに比例しているといえるだろう。卒業論文執筆での精神作業が人生の一助となること願っている。
キーワード1 女性活躍推進
キーワード2 日本の業績管理
キーワード3 労働時間の決定
キーワード4 実体的ルール
キーワード5