卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名阿形 健司 年度2016年度
タイトル子どもたちの友人関係-クラス内地位に着目して-
内容 小学校や中学校に通う思春期の子どもたちは、友人とグループを形成して学校生活を送っている。この時期のクラス内の友人関係は、「スクールカースト」という友人グループ同士のランク付けがされている。「スクールカースト」はどのクラス内地位の子どもたちにとっても心の重荷となっていると指摘されるが、本当にそうなのだろうか。鈴木(2012)の行った小・中学生の頃の友人関係についてのインタビュー調査の結果は、筆者にとって納得できるものであった。だが、その結果には該当しない「スクールカースト」の経験を持つものもいるのではないかと考え、筆者はインタビュー調査を行った。すると、調査対象者であるDとEの2名は、他の調査対象者とは違う経験をしていた。2名とも「スクールカースト」の存在を少なからず認識してはいたが、Dは、グループという枠やクラス内地位の差にとらわれず、気の合う友人と行動を共にし、時には普段行動を共にしない友人とも一緒にいた。また、Eは「スクールカースト」自体をあまり理解しておらず、付き合う友人が変わることで、友達の輪や趣味が広がっていくなど、「スクールカースト」という重荷を感じていない例外的な経験を持っていた。それゆえ、「スクールカースト」が存在するにも関わらず、心に重荷を感じずに学校生活を送っていた子ども達がいたということが分かった。これは、鈴木(2012)が指摘していない現象であった。
講評 2016年度の卒業論文について特筆すべきことは、一次資料を利用した人が多かったことと、採用した分析手法が多様であったことである。たいていの人が文献情報のみに基づいて卒論を書こうとするのに対して、ゼミ生16人のうち9人が何らかの形で聞き取り調査を行ったのは、おそらくゼミ始まって以来の実施率である。およそ16年間の学校教育の集大成として卒業論文という作品があるとすれば、著者固有の独自資料を手がかりに作品製作に携わったことは大いに評価できる。また、昨年度につづき、既存統計資料の二次分析に果敢に挑戦した人が現れたことも大いに評価したい。
とはいえ、一次資料を使って書いた卒論が全て論文として満足のいく水準に達しているかというと必ずしもそうとは言いきれない。長い時間をかけて質問項目を吟味し、念入りに調査設計を行った上で実施した調査と、準備不足のまま見切り発車で実施した調査とでは自ずと結果の品質が異なってこよう。せっかく調査をするのだから、事前の準備をしっかりと行い、悔いのない形で調査を実施できればよかったのにと、少し残念に思うところがある。
16人のうち7人は、文献情報に基づいて卒論を書いた。歴史研究、国際比較、将来予測、政策提言などテーマは多岐にわたっている。こちらも、丹念に証拠を集めて説得的に持論を展開したものから、主観的な願望が先行して根拠があいまいなまま自説を展開したものまで水準はさまざまである。結局のところ、一次資料を使おうが、文献二次資料を使おうが、どれだけ卒論執筆に真摯に向き合ったかということが作品の出来映えに表れている。執筆者各自は、自分の胸に手を当てて大いに反省してほしい。
これから卒論を書こうとする下級生にひとつアドバイスをするなら、学校教育の集大成たる卒論の執筆がうまくいくかどうかの半分ぐらいは、テーマ選択に依存していることを肝に銘じてほしいということだ。テーマ選択を誤るとどんなにがんばってもよい論文は書けない。それほどテーマ選択には時間をかける必要があるということである。もちろん、テーマを選ぶためには関連する先行研究を探索して吟味し、検討することが欠かせない。結局のところ、ちゃんと勉強すればよい論文が書けるけれども、勉強しないと満足のいく成果は得られないという、極めてありきたりな結論に至る。
キーワード1 スクールカースト
キーワード2 友人関係
キーワード3 クラス内地位
キーワード4 いじめ
キーワード5