学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 阿形 健司 | 年度 | 2016年度 |
---|---|---|---|---|---|
タイトル | 日本人の労働観に見る帰属意識 |
内容 | これまで日本企業の成長・発展は、従業員の勤勉さや忠誠心などの帰属意識によって支えられてきたと言われている。一体この帰属意識とは何なのだろうか。日本的経営研究に携わる3人の海外研究者の議論の吟味、日本人の労働観の歴史的検討、内閣府が実施した「世界青年意識調査」と「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」のデータを用いた国際比較、組織コミットメントの観点からの検討を行った。 その結果、三つのことがわかった。①日本人労働者の帰属意識の強さは、すべての時代において必ずしも一貫して強いわけではなく、社会構造の変化や外的刺激に伴って変化していること。②労働意識調査から、どの時代においても積極的な定着意識や転職意識を持っている者は少なく、反対に消極的な定着意識を持っている者が多いこと。③「組織コミットメントの三次元モデル」に当てはめると、特に内在的な「愛着的コミットメント」よりも外在的な「功利的コミットメント」や「規範的コミットメント」を強く持っていること。 以上より、日本人労働者の帰属意識の源泉は外部にあり、消極的な意識であると結論付けた。 |
---|
講評 | 2016年度の卒業論文について特筆すべきことは、一次資料を利用した人が多かったことと、採用した分析手法が多様であったことである。たいていの人が文献情報のみに基づいて卒論を書こうとするのに対して、ゼミ生16人のうち9人が何らかの形で聞き取り調査を行ったのは、おそらくゼミ始まって以来の実施率である。およそ16年間の学校教育の集大成として卒業論文という作品があるとすれば、著者固有の独自資料を手がかりに作品製作に携わったことは大いに評価できる。また、昨年度につづき、既存統計資料の二次分析に果敢に挑戦した人が現れたことも大いに評価したい。 とはいえ、一次資料を使って書いた卒論が全て論文として満足のいく水準に達しているかというと必ずしもそうとは言いきれない。長い時間をかけて質問項目を吟味し、念入りに調査設計を行った上で実施した調査と、準備不足のまま見切り発車で実施した調査とでは自ずと結果の品質が異なってこよう。せっかく調査をするのだから、事前の準備をしっかりと行い、悔いのない形で調査を実施できればよかったのにと、少し残念に思うところがある。 16人のうち7人は、文献情報に基づいて卒論を書いた。歴史研究、国際比較、将来予測、政策提言などテーマは多岐にわたっている。こちらも、丹念に証拠を集めて説得的に持論を展開したものから、主観的な願望が先行して根拠があいまいなまま自説を展開したものまで水準はさまざまである。結局のところ、一次資料を使おうが、文献二次資料を使おうが、どれだけ卒論執筆に真摯に向き合ったかということが作品の出来映えに表れている。執筆者各自は、自分の胸に手を当てて大いに反省してほしい。 これから卒論を書こうとする下級生にひとつアドバイスをするなら、学校教育の集大成たる卒論の執筆がうまくいくかどうかの半分ぐらいは、テーマ選択に依存していることを肝に銘じてほしいということだ。テーマ選択を誤るとどんなにがんばってもよい論文は書けない。それほどテーマ選択には時間をかける必要があるということである。もちろん、テーマを選ぶためには関連する先行研究を探索して吟味し、検討することが欠かせない。結局のところ、ちゃんと勉強すればよい論文が書けるけれども、勉強しないと満足のいく成果は得られないという、極めてありきたりな結論に至る。 |
---|
キーワード1 | 帰属意識 |
---|---|
キーワード2 | 日本的経営 |
キーワード3 | 組織コミットメント |
キーワード4 | 転職 |
キーワード5 |