卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名冨田 安信 年度2017年度
タイトル雇用の流動化を進める人事制度-プロサッカーを例に-
内容 本論文では、年功制、終身雇用制度が軸となっている日本の人事制度の問題点を明らかにし、プロサッカーで導入されているレンタル移籍制度を企業に取り入れることで、労働者の選択肢が広がる人事制度を考察した。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータによれば、転職が労働者の生涯賃金、退職金に及ぼす影響は転職時の年齢に大きく影響を受けることが明らかとなった。労働者にとって転職はリスクが高く、同一企業に長く勤め続けた人のほうが賃金の増加率が高くなるため、日本の労働市場においては、企業間での労働者移動が進まないという課題が明らかとなった。年功制、終身雇用制度の特徴である、勤続年数が賃金に与える大きな影響ため、欧米における転職を通じてキャリアアップするという行動が日本には根付いていない。今後、転職、労働市場の流動化が進んでいくとすると、企業と労働者双方にとってメリットの大きい制度は、プロサッカーではお馴染みのレンタル移籍制度の導入である。実際に、NTTや富士ゼロックスなど大手企業もレンタル移籍制度の導入を開始している。今後、レンタル移籍制度を導入する企業が増えていき、年功制や終身雇用制度が必ずしも安定的な働き方ではなくなるかもしれない。
講評 今年度は、3人が女性労働を卒業論文のテーマに選びましたが、2人が他国の女性労働を調べたのが今年度の特徴でした。1人は、男女平等意識が定着し、女性の就業率が高いスウェーデンを取り上げ、とくに充実した仕事と育児の両立を助ける制度について詳しく調べました。もう1人は男女の役割分担意識が強いのに、女性管理職が多いフィリピンを調べました。女性が家事・育児をするという意識は強いが、それは妻・母でなくてもよく、家庭使用人でよいことが、女性活躍につながっているという結論でした。女性労働をテーマにしたもう1人はマタニティ・ハラスメントに注目しました。出産後も働き続ける女性が増えたために、顕在化するようなったハラスメントです。今年度は、3人が女性労働を卒業論文のテーマに選びましたが、2人が他国の女性労働を調べたのが今年度の特徴でした。1人は、男女平等意識が定着し、女性の就業率が高いスウェーデンを取り上げ、とくに充実した仕事と育児の両立を助ける制度について詳しく調べました。もう1人は男女の役割分担意識が強いのに、女性管理職が多いフィリピンを調べました。女性が家事・育児をするという意識は強いが、それは妻・母でなくてもよく、家庭使用人でよいことが、女性活躍につながっているという結論でした。女性労働をテーマにしたもう1人はマタニティ・ハラスメントに注目しました。出産後も働き続ける女性が増えたために、顕在化するようなったハラスメントです。
女性労働以外でも、産業関係学科らしく企業の雇用管理制度にかかわるテーマを選んだ人が4人いました。1人は日本の雇用システムのメリット・デメリットを考察した上で、雇用者ではない働き方について調べました。1人は、労働市場が流動化していくこれからの時代、スムーズに転職できるしくみとして、プロサッカーのレンタル移籍制度が参考になるとしました。もう1人は、自分の本来の感情とは異なる感情を演出しなければならないという、感情労働という新しい概念に使って、今、職場に生じている様々な問題を読み解きました。外国人労働者を取り上げた1人は、アジア諸国など送り出し国に日本が職業訓練学校を設立し、そこで現地人を訓練して日本に送り込むことを提案しました。
産業関係学を少し離れて、社会問題を卒業論文のテーマにした人も2人いました。日本の英語教育を取り上げた人は、語学研修を受けるためフィリピンに滞在し、フィリピン人がふつうに英語を話すのを目の当たりにして、フィリピンと比較しながら日本の英語教育を考察しました。もう1人は学校の部活動における体罰を取り上げました。その行為を体罰と思うかどうかは人によって異なり、こうした認識の違いが、体罰がなくならない理由であると彼は考えました。
卒業論文では16,000字以上書かねばならず、書けるのだろうかと不安になる学生も少なくありません。私はゼミ生には「君たちは4,000字のレポートなら書けるでしょう。4,000字のレポートを4つ書けば、卒業論文が出来上がるよ」と言います。もちろん4つのテーマがバラバラでは卒業論文になりません。まず、卒業論文で取り組みたいテーマを決めて、そのサブテーマを4つ考え、それらをどのように繋げば、1つの論文になるかを考えます。そして、それぞれのサブテーマについて4,000字でまとめるというのが私のアドバイスです。もちろん、調べていくうちに、サブテーマの数や、それぞれのサブテーマの字数も、最初の計画からどんどん変わっていきます。しかし、4,000字のレポート4つなら書けるかもという気持ちになれば、まず一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
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