内容 |
本論文では、日本人労働者はなぜストレスを感じて心身ともに不調となるまで同じ会社で働き続けるのか。また、なぜ日本人労働者は、「早く仕事を片付けなければならない」等という感情を抱くのかについて、日米の労使関係を比較することで明らかにしたいと考えている。
第1章では、日本企業社会におけるメンタルヘルス問題の現状について取り上げた。厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によると、1999年を境にして労災補償の件数が増加の一途を辿っており、日本企業において依然としてメンタルヘルスの問題が改善されていないことがわかった。第2章では、ヨーロッパにおける「モラル・ハラスメント」について取り上げた。「モラル・ハラスメント」とは、言葉や態度によって、人の心を傷つける精神的な暴力である。その原因は、「組織的決定要因」「現代社会の変動」「個人的決定要因」の3つがある。「モラル・ハラスメント」は、個人間の人間関係の問題ではなく、個人を対象としている集団的な暴力の発現なのである。第3章では、日米の労使関係を比較することで、日本の労使関係が労働者にどのような影響を与えているのか見ていき、第4章では考察を述べている。 |