学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 冨田 安信 | 年度 | 2018年度 |
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タイトル | ワーク・ライフ・バランスと今後の日本人の働き方 |
内容 | 2007年に仕事と生活の調和憲章が施行されて10年たったが、ワーク・ライフ・バランスが実現しているとは言い難く、長時間労働や出生率の低下といった問題を抱えたままである。長時間労働が是正されない原因としては日本的雇用慣行があげられる。日本の正社員は定年までの長期雇用が保障される代わりに、仕事の配置や転勤、労働時間などについて企業による人事権を受容してきた。長時間労働は雇用保障の代償とも言える。また、日本の正社員の特徴である無限定な働き方、長時間労働が人事考課上で評価されること、残業代が生計費として家計に組み込まれていることがあげられる。ワーク・ライフ・バランスの取り組みに成功した企業の事例を見ると、そのきっかけは人材流出であり、非正規労働者の処遇であり、長時間労働などさまざまであった。共通していたのは、経営者が自社の問題点をしっかり把握して、経営者がその問題解決のための解決策を打ち出したトップダウンの取り組みだったことである。 |
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講評 | 今年度、特徴的だったことは、「働き方改革」に関連するテーマを選んだ学生が14人のうち6人いたことである。「働き方改革」という見出しを新聞やテレビニュースで目にすることも多く、学生にとっても関心の高いテーマだったようである。2人は働いている人々に自発的に長時間労働する動機について聞き取り調査し、1人は参与観察で、飲食店やコンビニで社員が長時間労働せざるをえない原因について分析した。長時間労働を是正するためには、企業が人事制度を改革し、仕事を見直すことが必要である。「働き方改革」に関する厚生労働省のガイドラインを丁寧に読んだり、働き方改革に取り組んでいる企業の事例を収集したりして、学生たちは論文をまとめた。 男性の家事・育児参加に関連するテーマを2人が選んだ。1人は、男性が積極的に育児参加することで、男女の伝統的な役割分担意識が変化していくという視点で書き、もう1人は、男性の育児参加が進むと女性の仕事と育児の両立が可能になり、子ども数が増えるという視点で書いた。関連するが、女性活躍について書いた学生は、日本と同じく女性管理職が少ない韓国では、アメリカのアファーマティブアクション政策を取り入れ、積極的に女性管理職を増やしていることを紹介した。 教育に関するテーマで論文を書いた学生が2人いた。1人は子どもの学力は親の遺伝子や所得に影響されるだけでなく、家族、地域、学校での人間関係、つながりにも影響されること述べ、もう1人は、高校卒業時の進路選択の1つとして専門学校進学に注目し、専門学校に進学して卒業した人々に、進学した理由を聞き取り調査した。 中小企業の抱える問題について書いた学生は、人手不足、女性活躍、事業継承について文献で明らかになったことを、中小企業の経営者に聞き取り調査することで確かめた。AIの発達が人間から仕事を奪うのかをテーマに書いた学生もいた。AIが発達することは、人間から仕事を奪うというより、深刻な人手不足を解決することにつながるのではないだろうか。 今年度のゼミ優秀論文には「地域間労働移動-経済学の視点からー」を選んだ。日本全体で見れば労働者の地域間移動は減少しているが、東京への一極集中は続いている。その理由を経済学の考えを使って説明しようとした。よく参考文献を読み、適当な統計資料を見つけてきたこと、何よりも、需要曲線と供給曲線のグラフを使った分析したところに経済学らしさを感じた。 |
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キーワード1 | ワーク・ライフ・バランス |
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キーワード2 | 長時間労働 |
キーワード3 | 出生率低下 |
キーワード4 | 働き方改革 |
キーワード5 |