卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名樋口 純平 年度2018年度
タイトル商社マンのキャリア形成
内容 近年、キャリアに関する考え方の多様化が謳われている一方で、以前からホワイトカラーの諸研究の少なさについても指摘(小池(1991)など)されていた。本論文ではホワイトカラーの中でも商社マンのキャリア形成に着目し、キャリア研究の第一人者である金井壽宏氏と小池和男氏の先行研究からキャリア形成を考察するにあたって分析の観点をまとめた。その上で、商社マンのキャリアの実態を暴くべく専門商社2社にインタビュー調査を行った。その結果、小池氏が述べていたように商社マンのキャリアの基本として商品群という専門性を軸とした上で、幅広い知識と経験が必要とされていることが理解できた。そしてその幅の広い知識や経験を高めるためにも、商社におけるキャリア・パスとして海外勤務と深く結びついていた。最終的に小池(1991)の総合商社におけるキャリア形成の先行研究と似た結果になったが、独立系商社と財閥系商社を比較した場合、役員クラスになるとキャリアのタテに違いがあったことは注目すべき点であり、今後はより多くの人事データから他商社でも同様の結果になるのかなど検証していくべきである
講評 卒業論文の作成にあたっては、自分が関心を持ったテーマについて、いろいろと本を読んでみてよかった、多少は苦しいながらも書き進める中に楽しさや充実感があった、と感じてほしいと思う。自分自身に向けて書く、という気持ちが大切と思う。

とはいえ、単なる自己満足に終わってもよくない。自分の設定したテーマについて、先行研究は何を語っているか、現状はどうなっているのか、を知る必要がある。すると、通常は、よく調べるほど自分に語るべきことがあまり残されていないことに気づく。そもそも、卒業論文でオリジナリティのある事実発見や考察を行うことは、たいへんむずかしい。それでも、先行研究を追いかけながら、自分なりに納得のゆくストーリーを展開することはできる。また、少数でもよく選んだ文献と格闘することで、意義のある考察をすることもできる。

 本年度の樋口ゼミ生の卒業論文は、どうであったか。テーマ設定としては昨年度に引き続きワークライフバランスを始めとした働き方改革について論じたものが中心となったが、自身の就職先企業や業種と関連づけて研究を行ったものも少なくなかった。商社に就職する者は商社マンのキャリア形成を題材としたり、種苗会社に就職する者は農業の海外進出を題材としたり、いずれも自身の将来に直接関係するテーマを取り上げたものである。こうしたタイプの研究には、メリットが少なからず存在するように思われる。社内のつてを頼りにインタビュー調査を実施したり社内資料にあたったりすることができるし、何より自身のより直接的な問題関心に支えられた研究のモチベーションを得ることができる。一方、働き方改革について論じた研究では、長時間労働の是正に関する比較的オーソドックスなものから地方公自治体のワークライフバランスのようなユニークなものまで、その切り口に自己の問題関心や個性が表れていたと思う。また、先行研究の豊富なテーマでは文献の渉猟が求められ、先行研究の乏しいテーマでは事例分析等にもとづいた自身の概念構成力が問われた。

 以上のような本年度の卒業論文は、総じて構想から準備、執筆に至るプロセスが順調に進められたという印象がある。一方、総じて先行研究の検討に不十分さが見られることも否定しがたい。この点は、来年度に向けた教員自身の課題でもある。


キーワード1 商社
キーワード2 キャリア形成
キーワード3 ホワイトカラー
キーワード4
キーワード5