内容 |
本論文では、まず待機児童問題に関して、厚生労働省や内閣府から出されている数値的データおよび、現在の日本の保育制度の観点から待機児童の現状を考察する。また、待機児童問題を考える上で最も解決すべき問題が保育不足であると考え、保育士の労働問題について考察をする。また、その際には先行研究より保育士資格を持ちながら保育士として働かない理由として挙げられている「賃金が希望と合わない(47.5%)」「他職種への興味(43.1%)」「責任の重さ・事故への不安(40.0%)」の3つの項目を考察する。これらの研究の結果、まず待機児童に関しては低年齢児が多く待機児童となっていることと待機児童の地域偏在が起こっていることが判明した。その背景には、まず都市部に人口が集中しており、都市部においては必要な敷地面積が確保しにくいことや低年齢児は保育士の配置人数が他の年齢層より多く必要であり、保育士確保が難しい状況が示されている。続いて、保育士の労働問題においては、ラスパイレス指数を用い類似職種、女性割合が高い職種と比較したところ先行研究ほど、賃金水準が低くないことが判明した。しかし、保育士にはポストや上位資格が乏しく、昇給も基本的に経験年数によるものだけとなっていることから、昇給という面で不安があるのではないかと考えられる。さらに、保育士資格取得までの機会費用が以前より向上しており、費用回収の面からも他の職種への就職につながっているのではないかと考えられる |