学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 上田 眞士 | 年度 | 2019年度 |
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タイトル | AI社会と日本の雇用 |
内容 | 本論文では昨今めざましい発展を遂げるAI(人工知能)について取り上げ、研究課題でもある雇用問題と絡めてAIテクノロジーが取り巻く今後の日本社会で働き手としてどうAIと付き合っていくかを分析した。AIと労働について議論する時多くの場合その未来は悲観的だという主張がメディア等で散見される。その内容は「AIに職を奪われる」というものが多い。現在その主張には様々な議論が交わされているが、「AI」という分野がまだ登場してまもなく、底の知れぬテクノロジーであるが故にその内実は科学的根拠に基づくものから都市伝説まがいのものまで多種多様である。本論文ではそうしたAIについても実態に触れつつ、AIの性質上どのような仕事が機械に置き換えることが可能なのか、逆にAIには代替できない仕事は一体どのようなものなのか、そしてAIは本当に人類から職を奪ってしまうのかという問題を明らかにしていく。そうした我々が今後社会に出て働く上での漠然とした不安をクリアにしていき、未来のAI社会で我々かどうAI、ひいてはロボットと労働現場で共存していくべきかを考察していく。 |
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講評 | 皆さんの卒論テーマを概括的に整理してみると,「私立学校教員の賃金と評価」「長時間労働・過労死問題とWLB」「働き方改革・非正規雇用・同一労働同一賃金」「ワーカーホリックとアジア人の文化」「AI技術革新と雇用」「外国人労働者受入と労働力不足問題」「LGBTと共存する社会」等々となっています。こうした一連の主題が表象しているものは,一方でのグローバル規模での市場主義の加速と急速な技術革新,また他方では国内での種々の労働問題,社会問題の発生という,現代の雇用社会を舞台に展開している構造変化,現実社会での当事者たちの苦闘ということになるでしょう。個々の論文を取り上げてみると,問題の掘り下げや論理的な記述という点では,たしかに精粗もあったように思います。しかし,大変な就職活動の中でも,基本的には卒論作成という大きな課題に対して,ゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。そのように考えています。そこで,ここでは皆さんも正面から取り組み,苦労もした研究や考察というものをめぐって,わたしが大事だと思うポイントを簡単に指摘しておきたいと思います。そして,それを4年ゼミでの卒論作業を締め括る講評とします。 まず第一に皆さんの卒論は,本質的に「批判的」な研究であってほしい。そうした要望が一番目の要点です。言うまでもなく,雇用取引の当事者である労使は,互いに深く依存し合っています。しかし,同時にその相互依存的な関係の中には,利害の相違や対立も抜き難く存在しています。それが現実社会の中では,どのように制度的に「処理」されているのか,そのありようと向き合い,正面から観察し理解しようとする態度が,まずは大事だと言うことです。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤の表現物にこそ,考察の焦点があるのだと思います。少々設例的な言い方をすれば,ただ単に深刻な長時間労働の実態を告発するだけでは,議論としてはつまらない。なぜ現実はそうたらざるをえなかったのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい。あるいは,ただ単に日本的生産システムと現場からの「改善」の積み上げを称賛するだけではつまらない。それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで,洞察の目を向けて欲しい。そういうことになるでしょう。 また二つ目に,資料を調べ,文献を読み進めて,卒業論文を仕上げる。そのまとめや考察にあたって,付け焼き刃の無理矢理な「政策提言」などを行わないこと。この点も肝心なポイントです。むしろ,疑問点や問題点を掘り下げて提示することの方が,ズッと大事だということです。漠然としていて曖昧模糊で,何を論じて良いのか判らないという状況から,具体的に解かれるべき問題が見えて来る。そこが一番大事なのだと思います。課題の存在や正体さえ腹に落ちれば,多くの当事者たちの実践の努力は,試行錯誤を通じて,必ず何らかの答えを用意して行きます。要するに,無理矢理な「政策提言」などしないという研究態度には,現実社会で苦闘する当事者たちの実践の努力,それへの大きな敬意が含まれている。わたしはそのように考えています。 以上,「言うは易く,行うは難し」。いずれも自分に返ってきそうなコメントですが,卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけとして理解して欲しい。そのように思います。 |
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