内容 |
第4次産業革命に伴うデジタル技術の驚異的な革新により、AIなどの機械が人間の仕事を代替するようになったため、スキルの低い労働者は雇用の枠からあぶれ、失業者が増大してしまう可能性が高まっている。そこで、議論されるようになったのがベーシック・インカム(通称BI)で、BIとは国が毎月など定期的に、最低所得程度の現金を国民全員に無条件に支給する制度だ。BIには賛否両論の声が挙がるが、その中でも特に「人々が働かなくなるのではないか」という批判がよく出る。本論文ではこの批判に対し、真っ向から反論していく。まず、現行の社会保障制度である生活保護では、保護脱却をすると逆に可処分所得が減少するという落とし穴があることを指摘し、一方のBIは、収入が増加した分可処分所得も増えるため、就労インセンティブを引き上げる可能性があることを述べる。また、マクロ経済学の観点からも低い所得水準において生活保護よりもBIの方が、労働供給がより多くなることもわかった。さらに、ナミビア、フィンランド、カナダで行われたBI導入実験結果から、BI導入が労働供給を下げる有意な影響が見られなかったことを示し、BI導入で人々は働かなくならないと結論づけた。 |