学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 寺井 基博 | 年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|---|
タイトル | テレワークの推進と長時間労働の是正 |
内容 | 本論文では日本の長時間労働是正を軸として日本と先進諸外国の労働時間規制の沿革と現状について国際比較を行い、それをもとにテレワークの導入が日本の働き方をどう変えるのか考察したものである。また、日本の労働市場においてテレワークを効果的に活用するために、日本の労働時間規制はどう変化すべきか、その展望も示している。 日本の労働時間規制の今後を考えるため、日本のこれまでの労働時間規制や労働市場の構造を他の先進諸外国と比較し考察を行った結果、長期雇用や年功賃金、人事考課などのいわゆる日本型雇用の特徴こそが長時間労働の原因となっていることが分かった。その一方で長時間労働こそが長期雇用を支える役割を果たしていたことも分かった。また先進諸外国の労働時間規制とテレワークへの対応を調べると、アメリカではテレワーカーに対して、労働時間規制を適用除外とする「ホワイトカラーエグゼンプション」が用いられていること、ヨーロッパでは具体的な労働条件を法で定めるのではなく事業所や企業レベルでの労使自治にゆだねていることが分かった。 これらを踏まえ、先進諸外国の方法を日本に取り入れることができないか考えた。「ホワイトカラーエグゼンプション」については、それを適用された労働者は労働時間の制約が一切なくなり、使用者の指揮命令下にないと判断され日本で定義される「労働者性」を失うという側面から難しいと判断した。労使自治についても、日本のような企業別の雇用関係、非流動的な労働市場という状況により、労使の交渉力が均衡しないことから、取り入れるのは難しいという判断である。 |
---|
講評 | 卒業論文の作成は、先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー等の調査を行い、それらの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、 各人が関心をもって取り組むことができるようにテーマは自由とした。ただし、各自が選んだテーマと産業関係学との関係を論文の中で明らかにすることを条件としている。 今回提出された卒業論文のテーマは、組織や日本的雇用慣行など「労使関係」に関するもの、長時間労働、テレワーク、女性活躍など「働き方改革」に関するもの、プロスポーツ選手や各種講師などの「労働者性」に関するもの、貧困や雇用機会創出など「社会問題」に関するものに分かれている。文献研究が主であるが、聞き取り調査に基づいて考察を行ったものも複数みられた。 いずれの論文も先行文献を丹念に読み込んで、主要な議論を整理したうえで各自の見解が述べられていた。文章表現も的確であり、全般的に論文としての完成度は高い。提出者全員が卒業論文作成に懸命に取り組んだ努力は大いに賞賛に値する。この卒業論文は紛れもなく各人の「大学生活の到達点」であり、これを起点として社会人としての一歩を踏み出し、 さらなる研鑽を積んでもらいたい。 総合評価についてはいずれも甲乙つけ難いものであったが、最優秀論文は、「子どもの貧困における発生と連鎖のメカニズム-就労と教育による分析」とした。 評価を分けたポイントは分析力と構成力であった。一般に、論文作成に費やした時間に比例して論点把握や考察が深まる傾向がみられるが、本論文では、それに加えて、これまでに培われた分析力と構成力、文章表現力が多いに発揮されている。ことばの定義、文献考察の深さ、統計データによる論証、論理の展開、そして明快な文章表現は秀逸で、総合力として他を抜きん出ていた。 |
---|
キーワード1 | 長時間労働 |
---|---|
キーワード2 | テレワーク |
キーワード3 | 労働時間規制 |
キーワード4 | 内部労働市場 |
キーワード5 |